文学

今年読んで面白かった本(小説)

年末にご挨拶として、今年読んで面白かった本(小説)を順不同であげておきます。 城平京『虚構推理』講談社タイガ。 松田青子『おばちゃんたちのいるところ』中公文庫。 川奈まり子『八王子怪談』竹書房文庫。 同上『東京をんな語り』角川ホラー文庫。 昨日…

曼陀羅感覚

先日、同好の士の方々に都市論の話をする機会があって、ロラン・バルト『表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)』の、かの有名な、東京の中心は空虚であるというくだりのある文章をご紹介したのだが、訳文に「曼陀羅感覚」とある。 あれ?ロラン・バルトはこんな密教…

忠臣蔵論争への挨拶

風聞によると文楽は台本が古くて現代人の鑑賞にたえないのだそうだが、やはり人形浄瑠璃の台本として書かれた『仮名手本忠臣蔵』(以下、忠臣蔵と略記)は今でも歌舞伎の人気演目である。 先日、作家の丸谷才一氏が亡くなったというニュースがあった。私は同…

与右衛門の鎌

三遊亭円朝『真景累ヶ淵』は、もともと「累ヶ淵後日の怪談」という題名であったそうで、つまり「累ヶ淵」として知られている物語の後日談という位置づけである。真景累ケ淵 (岩波文庫)作者: 三遊亭円朝出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/03/16メディア:…

イプセン『野鴨』

イプセン『野鴨』を読み終わる。 正義と幸福との対立を巧みに描いていて、アドルノ先生が推奨するのも、なるほどと思う。 ただ、『人形の家』や『幽霊』もそうだけれども、イプセンの作品はテーマ先行で受け取られやすいが、実際に読んでみるとセリフ劇とし…

酒井健『シュルレアリスム』

シュルレアリスム―終わりなき革命 (中公新書)作者: 酒井健出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 145回この商品を含むブログ (19件) を見るこの頃、中公新書を読むことが増えている。バタイユ研究家によるシュル…