「喰女」

ロードショーで見そびれたのが、レンタルで出ていたのでDVDで視聴。

レンタルショップの番付ではまったく人気がない様子だったので、おいおい、柴崎コウのお岩に市川海老蔵伊右衛門だぞ、と思いながら見はじめた。四谷怪談ファンとしては、鶴屋南北の『東海道四谷怪談』の産女のお岩を意識した演出を楽しんだし、映像も美しい。だが、確かにこれはホラー映画ファン向きではない。
南北の芝居をアレンジした舞台劇を準備する劇団で起きた怪異を劇中劇を使って描いているのだが、現実パートの愛憎劇と、劇中劇の「四谷怪談」との関係が、「四谷怪談」を知らないとよくわからないのではないか。クライマックスは芝居の夢の場をふまえた趣向だし、伊右衛門役の役者が首を斬られても動いているのは、伊右衛門のセリフ「首が飛んでも動いて見せるは」に引っかけたシャレで吹いてしまったが、これも知らない人は知らないだろう。
正直なところ、劇中劇ではなく、直接、三池監督のイメージする「四谷怪談」を時代劇としてそのまま描いた方がよかったのではないか。あるいは、現実パートと劇中劇のコントラストをもう少しつけて、もう少し現実パートをふくらませて、芝居「四谷怪談」についての説明をしてしまうとか、役者たちの愛憎をもう少し描き込んでおくとかすれば、少しはわかりやすくなったかもしれない。
役者たちの熱演がもったいない気がした。