私信・本好きの関西人のためのぶらり東京散歩コース

いろいろ考えたのですが、東京都心は関東大震災で江戸の名残が崩壊し、東京大空襲で明治が焼け、東京オリンピックの際の再開発で戦後の闇市的なものが消え、バブル期の地上げで下町情緒が破壊されたため、京都のようなわけにはまいりません。
そこで一押しなのが靖国−神保町−湯島聖堂神田明神のコースです。途中、危険地帯はありません。危ない目に遭いたければ、夜の歌舞伎町−大久保コースもありますが、今回はやめておきましょう。
まず、朝9時過ぎに宿を出て地下鉄半蔵門線田園都市線から直通)に乗ります。観光旅行者が9時前に電車に乗るようなことをしてはいけません。東京の通勤ラッシュは半端じゃないんです。地下鉄に乗れば、途中乗り換えなしで九段下に行けるはずです。
九段下駅から地上に出れば、靖国神社の大鳥居が見えます。ちなみに九段下交差点交番の裏あたりが蕃書調所跡ですが何も残っていません。かわりに不愉快な展示館が建っていますが無視して、靖国神社に突入しましょう。本殿の右奥にあるのが楽しい遊就館です。
入館料は確か大人800円・学生証のある方は500円でした。(2年前のものですが、たぶん同じでしょう。)
遊就館内では簡単な飲食もできます。海軍カレー650円,冷やし海軍珈琲350円など。
また一階ホール売店では,遊就館図録1900円,英霊の言乃葉500円などのほかに靖国グッズを買うことができます。軍帽2365円より,迷彩Tシャツ2500円,戦闘機・戦艦プラモ各種,その他。
まあ、遊就館の遊び方は、高橋哲哉先生や子安宣邦先生のご本を精読されている言霊さんには釈迦に説法というもの。
英霊祭祀に疲れたら引き返して鳥居を出て、靖国通りのダラダラ坂を下りてまっすぐ歩きます。首都高速高架下の橋(俎橋、橋を渡る手前の小さな公園に変なものがあります)を渡って、さらにまっすぐ。専修大学前交差点を渡ったあたりから進行方向右手に神保町古書店街が始まります。九段下から足の速い人なら5分か10分ほどです。
東京で唯一自慢できるのがこの神保町の古書店街です。私は各地の書店・古書店をのぞくのを楽しみにしていますが、これだけの書籍が集まっているのはここだけです。
よろしゅうござんすか、途中脇道に迷い込んだりしてちゃもったいない。専修大前交差点から神保町交差点を経て駿河台下交差点まで、言い換えりゃ地下鉄神保町駅専大前出口脇の芳賀書店(浮世絵とポルノ)から岩波書店本社ビル(岩波ホール)を経て三省堂書店本店まで、進行方向右手の歩道沿いにズーッと古本屋と本屋です。東京で歴史や文化に触れようって言うのなら、それは間違いなくここにあります。裏通りに一歩はいれば中小版元が軒を連ねていますが、それはまたいつかご案内する機会もあるでしょうから今回は省略。
くれぐれも最初の店であわてて買い物などなさらぬように。三省堂まで一通り見て目星をつけてから戻った方がいいでしょう。特に岩波のある神保町交差点を過ぎて三省堂の手前までのあたりに出物があります。
神保町界隈で昼食にするなら、どこへでも。このあたりは学生の街で、うっかり入ったらぼったくられるような怖い店はありませんからご安心を。どの店も味はたいして変わりませんし、その分値段もたいして変わりません。上方の人には濃い味付けでしょうが、ご勘弁。
三省堂から先はスキー用品街になっちゃってるんで古書マニアは行く必要はありません。駿河台下交差点からダラダラ坂を上っていけばお茶の水駅に着きます。途中、左手に明治大学、右手になんとかいう病院があってそのあたりが大久保彦左衛門屋敷跡ですが何も残っちゃいません。
お茶の水駅に着くとすぐ目の前に神田川に架かる橋がありますが、これはお茶の水橋、目指す湯島聖堂へはこの橋じゃなくて、東京駅寄りの聖橋を渡らないといけません。丸善お茶の水店前を歩いて聖橋側に出ます。聖橋のたもと、日立のビルが建っている生け垣のあたりに、確か蜀山人の碑があったかと思いますがそれだけです。
聖橋を渡ると右手に公園があって、湯島聖堂はその奥にあります。もう少し行くと神田明神です。門前左手の茶屋、天野屋の甘酒が名物。神田明神は拝殿の裏を見逃しちゃいけません。銭形平次の碑があります。神田明神の裏をさらに進むと湯島天神があります。
これでもう半日つぶれます。私は学生時代、朝、家を出て、神保町をまわって夕方大学に着くのが日課でした。足の達者な人なら、湯島天神から本郷に出て、本郷もかねやすまでは江戸のうち、なんて川柳の碑を見て、東大界隈の古書店を冷やかすこともできましょうが、まあ、ご無理はなさらぬことです。
ゴチャゴチャ書きましたが、地図を見れば一目瞭然、実に単純なコースです。