スーパーの特売品だけで年越しそばと正月の準備はできた。年賀状はまだ出していないが、ままいいや(業務用は出した)。
今年読んだ新刊書から3冊を選んでご紹介する。
川奈まり子著『眠れなくなる怪談沼 実話四谷怪談』講談社。
正直言って「眠れなくなる怪談沼」は要らない、無い方がいい。ひどいセンスだと思う。
だが内容はすばらしい。「四谷怪談」というテーマに深く切り込んだうえで多面的に展開して見せた。
だからこそタイトルは『実話四谷怪談』だけでよかった。
こんなことを書くのも、この著者と私の関心が非常に近く内容に共感し、かつ著者の表現力が豊かだからである。感嘆と羨望と嫉妬で胸を一杯にして、ただ一つの残念を指摘した。
版元の紹介サイトはこちら↓
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000375814
文庫化するときは『実話四谷怪談』だけにせよ。
鷲羽大介著『暗獄怪談 或る男の死』竹書房怪談文庫。
はてダ以来の古参ブロガー、ワッシュさんこと、鷲羽大介氏による実話奇談集。
市井に生きる人々のさまざまな人生の一コマ、ただしアンバランスな一コマを慎ましく掬い取って見せる、洗練された大人の読み物である。
ブログを介して交流があったから誉めるのではない。読めばわかる。
https://washburn1975.hatenablog.com/
石川義正『存在論的中絶』月曜社。
かつては、自らは決して思想家とは名乗らないが、そう呼びたくなるような批評家がいた。花田清輝とか、若い頃の柄谷行人のような人がそうだった。
この系譜は最近では絶滅したかと思っていたが、まだ命脈を保っていた。本書の著者がそうである。
いわゆる思想家は考えること自体に夢中になる傾向があるから自分の思索に酔ってしまって、ここまで思考を研ぎ澄ますことはない。
しかし、こんなことを言うと著者に呆れられるだろうが、私が本書を興味深く思ったのは、実はかねてよりの宿題にしていた妖怪ウブメを捉える手がかりになりそうだったからである。
https://getsuyosha.jp/product/978-4-86503-179-9/
それでは皆さん、よいお年を。