文学報国会の時代

文学報国会の時代

 冒頭に「記憶せよ、十二月八日。/この日世界の歴史あらたまる。」で始まる高村光太郎の戦争賛美の詩「十二月八日」が掲げられている。J・レノンのRememberに似たフレーズがあるのが思い出されて、なんだか妙な気分になる。
以下、本書の「プロローグ」から抜き書き。

やがて、太平洋戦争当時、文学者の大政翼賛組織である「日本文学報国会」というものがあって、高村光太郎もそこに加わっていた、という事実を知った。光太郎だけではなく、当時のほとんどの文学者が、好むと好まざるとにかかわらずそこに参加し、程度の差こそあれ戦争を賛美する言論を展開していたのだ。学校で学んだ歴史でも、文学史でも知ることのなかった事実だった。
 戦争への反省からスタートしたはずの戦後教育のなかで、なぜその事実がわれわれに伝えられなかったのか。なぜ作家たちは戦争に加担し、協力していったのか。戦争はどのようにして始まり、そして継続されていったのか。当時の知識人や文化人は戦争の時代に何を考え、どのような行動をとったのか。政府や軍部の独走だけではたして戦争が起こりうるものなのか。

著者は、宮武外骨の研究者。