愛のむきだし

長編映画が苦手なので評判は知りつつも敬遠してきた作品。雪に降り込められたのをよい機会に昼食をはさんで視聴。
愛のむきだし [ 西島隆弘 ]
シンプルな初恋物語にいろいろなものをめいっぱい詰め込んで、恋する二人を思いきり遠回りさせたというストーリー。あえて言えば、父親による虐待で心に傷を負った少年少女の悲劇なのだけれども、それも物語のモチーフというよりは、たくさんのエピソードの一つという感じがする。一歩間違えると雑然かつだらだらになって、途中で飽きるところなのにそこを飽きさせないのは、テンポのよい演出と役者たちの力演(怪演)のおかげか。
ヒロイン・ヨーコ役の満島ひかりは、ウルトラマンマックスのアンドロイド役だった人。無表情な顔に見慣れていたものだから、感情の起伏が激しく、物語の進行とともに人格まで変わっていくヨーコ役での熱演に驚いた。こういうちょっといいところのお嬢さんが壊れちゃいましたみたいな美しさは私の大好物である(見てるだけなら)。
ユウ役の西島隆弘はこの作品で初めて知った。この作品の見どころの一つはユウの視点でヨーコの美しさを描くことにあると思うので、主人公というより狂言回しに近い役割。もちろん派手な立ち回りもいっぱいやってくれるんだけれども、やっぱりユウはカメラなんだと思う。
怪演と言えば、ユウの父親役の渡部篤郎とヨーコの義理の母親カオリ役の渡辺真起子がアダムスファミリーみたいで強烈。それにコイケ役の安藤サクラのニヒルな悪女ぷりも見事。
たいへん楽しめたのだが、昨日、この作品をレンタルショップで借りだす際、タイトルを度忘れしてしまって、店員さんに「あのー、邦画で『愛の…むき卵』みたいなタイトルの映画ありませんか」と尋ねてしまったのに、若い店員さんがニヤリともせずに「『愛のむきだし』ですね。上下二巻です、こちらです」とクールに案内してくれたのが痛恨の極み。