老父、本格的に呆け始める

父とはいえ他人のプライベートに属することだから、こういうところに書くのもどうかと思っていたが、後の参考のために書き出して置くことにする。
先々週、86歳になる老父が認知症と診断された。脳の前部と側部と頭蓋骨とのあいだが、素人目にもわかるほどすき間ができていた。医師の話では、同年齢の健康な人よりも隙間が広いとのことだった。
この日の病院からの帰りに、亡くなった祖母がいっしょにいるようなことを言っていたので、これはいよいよやばいかもと案じていたが、昨日、不安が確信にかわった。
昨日の昼、実家に着くと、老父が着替えをしている。どこかに出かけるつもりらしいが、その理由が携帯電話の修理だったり、電気髭剃りの修理だったりところころ変わる。電池だったら買ってくるよといっても、自分が行かなければわからないと言い張る。母が昼食を出すと、姉さんが座る所がないと言う。去年亡くなった父の長姉の名を呼ぶ。やはり亡くなった次姉のことも言うので、母がもう亡くなったと言うと非常に驚く。母の話では朝から何度もこの調子だと言う。
朝食後、薬を飲んだらおさまるかと思ったが、どうしても出かけると言って一人で三輪電動車いすに乗って出かけてしまう。近所の電気店に行ったのだろうと思っていたが三十分たっても帰って来ないので心配になり、あたりを探し始めるが見当たらない。結局、二時間後、自分で帰宅したが、約二キロほど離れた多摩川土手まで行ってきたらしい。たいへん上機嫌で何か話しているが、とりとめがなくて何を話しているかわからない。
妻に話すと、義父にもよく似たことがあったそうだ。