子どもって

昨夜、ほぼ同世代の仕事仲間に一回り年下の方を加えて会議の後、飲み屋に行った。その席で若い友人からバブル直前くらいの世相について尋ねられて、「ああ、あの頃はね」と口々に語り始めたのだが、どうも互いの話が一致しない。そういう年齢になったということか。
大人になると自分が子どもだったことを忘れる、とはよく言われる。でも、どうやら自分のことだけではなくて、子どもってどんな存在だったかも忘れてしまう人も多いらしい。たとえ目の前に現実の子どもがいても目に入らない。そういう人に限って現実のかわりに自分の頭の中で観念の子ども像をふくらませて「子どもとはこういうものだ」、「子どもらしさとは」とお説教をたれ、あまつさえ「自分が子どもの頃は」と思い出話を始めたりする。そんな困った人によく出くわすようになった。
『チビッコ三面記事』という本は、ともすると私たちが忘れ、場合によってはねつ造してしまう「あのころの子ども」の姿を、敗戦直後の昭和20年代から昭和63年までの子どもに関する新聞記事を基礎データにして〈子どもの実行力〉、〈子どもの事故〉、〈子どもと生活〉、〈子どもたちの禁止事項〉、〈子どものアブナイ遊び〉、〈子どもと食べ物〉、〈オトナが子どもにやった犯罪〉の7項目に整理した上で伝えてくれる。

チビッコ三面記事

チビッコ三面記事

ありがちな「子どもを中心とした戦後史」なんていう陳腐なものではなく、ズバリあのころの子どもたちに迫っているのがよい。読んでいると「あったな、こんなこと」、「この遊びは自分もやったぞ」と思える項目が見つかる。
自分の子ども時代を理想化して「昔はよかった」という人に、「昭和24年には小学生のスリ15名が検挙されていますが…」とか「昭和30年代にはずいぶんアブナイ遊びが流行っていたんですね」と突っ込んであげたくなる。