原ファシズムの特徴2 非合理主義

以下、『永遠のファシズム』より写経。

 2 伝統主義は<モダニズムの拒絶>を意味の内にふくんでいます。ファシストナチスもテクノロジーを賛美しましたが、伝統主義思想家は、テクノロジーを伝統的精神価値の否定であるとして拒否するのがふつうです。いずれにせよ、ナチズムが産業振興を誇っていたとしても、その近代性賛美は、「血」と「土」(Blut und Boden)に根ざしたイデオロギーの表面的要素でしかありませんでした。近代世界の拒絶が、資本主義的生活形態の断罪というかたちで擬装されていたわけですが、その主眼は一七八九年(もしくは明らかに一七七六年)精神の拒絶にあったのです。啓蒙主義や理性の時代は、近代の堕落のはじまりとみなされるのです。この意味において、原ファシズムは「非合理主義」であると規定することができます。
エーコ、前掲書、p50