韓の痕跡

一読して興奮してしまった。
http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20070707/p2
この記事、Arisanさんは「たんなる想像」とご謙遜なすっているけれども、たいへんな着眼なのではないでしょうか。
例に挙げられている「ぬらりひょん」の出自がどうか、ということより、日本の妖怪伝承に海外の文化の影響があってもおかしくはないということです。
そう言えば、わけのわからない名前の妖怪はいくらも思い当たる。うわんとかおとろしとか。
以前、室町時代百鬼夜行絵巻をながめていて、どうやら外国産のようにみえる連中がかなり混じっていることに気づいて面白く感じたものだが、その時は中国の『山海経』の影響を考えていた。けれども、Arisanさんの言うように、朝鮮の影響ということも十分考えられる。というより、考えない方がおかしいのだ。隣の国なんだから。
そう言えば、大塚英志氏だか、川村湊氏だったか、韓国併合時代の柳田国男が日韓民俗の比較研究に消極的だったことを問題視していた。
この方面、最近は不勉強で、依田千百子氏による神話の比較研究くらいしか知らないが、突っ込んでいったら面白いものがたくさん出てくるような気がする。子安宣邦氏の言葉を拝借すれば、妖怪に見る「韓の痕跡」というところか。
秋田大学の島村氏がちょっとやっていたのではなかったかなあ。
これについて、同好の士はどうお考えになるだろうか。
妖怪学の読書から遠ざかってずいぶんたつので、すでに専門家のあいだでは論じられていることかもしれません。ご教示いただければ幸いです。

追記

柳田云々は川村湊氏だった。自分で日記に書いていたのを忘れていた。
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20050718
嗚呼、呆け中年。

関連書籍

怪談に夢中になっていた頃のフロッピーを漁ったら、こういうメモが出てきた。しかし、やはり名詞に着目してはいない。
柳尚熈『韓国の怪奇民話』(評論社)
「鬼神が築いた堤防」(p104)「聖帝の魂の子」(p228)鼻荊郎と吉達門の話。『韓国神話』も見よ。一夜橋・鬼の架けた橋。
「死霊の訴え」(P203)化け物屋敷に勇士が肝試しする。怪事は死霊が敵討ちを頼む勇士を探すための試験。江戸怪談に類話。
「尼僧の怨霊」(p216)道成寺。裏切られた女の執念が蛇となってつきまとう。
「鬼神のいたずら」(p74)化け物屋敷。天狗の石礫。
「花嫁を襲う悪霊」(p234)三輪山型神婚説話。『韓国神話』も参照。
「鬼神を追い出して妻を娶る」(p86)落語『死神』。イタロ・カルビーノ『イタリア民話集』も参照。
「嫉妬に狂う幽霊」(p259)うわなりうち。
「妾のうらみ」(p198)皿屋敷
韓から日へ、だけか。近代の場合は違うだろう(タクシー幽霊のケース)。昔話が現代から再構成されることにも注意。
島村恭則『日本より怖い韓国の怪談』河出書房新社