トンデモな請願

最近、ボーガスニュース並みの実話が多くなってきて、虚構と現実の区別がつかなくなるときがある。もっとも、若くて頭のいい方々はネタとかベタとか言って、てきぱきと片付けているようだが、そういうパソコンの最新機種の使い方については、呆け中年には荷が重い。
正月早々、妻が雄叫びをあげているので、なにかと思ったら、昨年暮れに松山市でトンデモな請願が採択されたようだ。
以下、「松山市男女共同参画推進条例/「ジェンダー」賛否/「特性配慮を」請願採択 市議会」と題された愛媛新聞(12/18付)の記事より。

 12月定例松山市議会は最終日の17日,市男女共同参画推進条例の運用基本方針として男女の特性の違いへの配慮などを求めた請願を賛成多数で採択した。請願は中村時広市長に送付され,市は来年の12月市議会で対応状況を文書報告する。採択を受け岩城一範市民部長は「内容を精査し,今後の事業展開を検討したい」としている。

 請願は同条例を運用する際,専業主婦の社会貢献を評価し,支援▽表現の自由,思想信条の自由を侵さない▽市がジェンダー(社会的性別)学,女性学の学習・研究を奨励しない―など11項目を基本方針とするよう求めている。

 本会議では池本俊英氏(自民)が賛成,三宮禎子(共産)武井多佳子(フィフティネット)両氏が反対の立場で討論した。
 池本氏は男女共同参画社会基本法などにないジェンダーという言葉が条例に使われているとし「ジェンダーの解消,ジェンダーフリーという思想は,あらゆる性差意識や男女の役割分担を攻撃対象とさせる性格を持っている」と主張。請願が求める方針について「政府の基本方針とほぼ同じ」などとした。
 一方,三宮氏は請願にはジェンダーに対する誤解があり「施策の基本をゆがめる内容」と指摘。「男女共同参画社会基本法の精神に反し,条例をゆがめる結果にならないように十分な審議が求められる」と述べた。武井氏は女性学で専業主婦の社会的評価なども研究されているなどとし「(同条例の)運用の基本方針は市民の人権に影響を与える」と,さらなる審議を求めた。
 採択の結果,自民,新風会など25人が賛成。共産など5人が反対,公明,新風会の一部など14人は退席した。
 市議会事務局によると,17日午前10時現在,同請願をめぐり市内外から賛否のメールやファクスなど4百6件が届いた。

ジェンダーという概念について「ジェンダーの解消,ジェンダーフリーという思想は,あらゆる性差意識や男女の役割分担を攻撃対象とさせる性格を持っている」などと考えるような危険な思想は、いわゆる「フランクフルト学派の陰謀」であることは既に明らかになっている。
請願には「表現の自由,思想信条の自由を侵さない」という項目が含まれているのだそうだが、一方で「市がジェンダー(社会的性別)学,女性学の学習・研究を奨励しない」とある。
自治体に、特定の学問分野の学習・研究を奨励しないことを求めることは、「表現の自由,思想信条の自由」と切り離せない学問の自由に対する制約になるはずなのだが、どうして矛盾を感じずにいられるのだろう?
ちなみに請願内容は次のようなものだという。

1.日本の伝統と文化を尊重すること。
2.身体及び精神における男女の特性の違いに配慮すること。
3.家族と家庭を重視すること。
4.専業主婦の社会的貢献を評価し,支援すること。
5.子どもを健全に育成する上で,乳幼児期に母親の役割が重要であることに配慮すること。
6.性教育は社会の良識に配慮し,子どもの発達段階に応じて行うこと。
7.数値目標は現実的に策定し,長期的視野に立って達成すること。
8.教育においては上記の全項に配慮するほか,規範意識と公共の精神の醸成にも努めること。
9.表現の自由及び思想信条の自由を侵さないこと。
10.松山市ジェンダー学あるいは女性学の学習あるいは研究を奨励しないこと。
11.性別による固定的役割分担意識及びそれに基づく社会習慣を認定した場合には,その認定について松山市議会に報告すること。

9.と10.が矛盾していることは一目瞭然だが、最後の「性別による固定的役割分担意識及びそれに基づく社会習慣を認定した場合には,その認定について松山市議会に報告すること」というのにも驚く。
どういうことなのか、シャレでも皮肉でもなく理解に苦しむ。
市が「性別による固定的役割分担意識及びそれに基づく社会習慣を認定」し、それを「松山市議会に報告する」ことを求めているのだろうが、そもそも「性別による固定的役割分担意識及びそれに基づく社会習慣を認定」するとは、どういうことを想定しているのだろうか?
私にはよくわからない。
あるいは、「ジェンダーってよくわからなくて怖いから、市がちゃんと取り締まってよね」ということなのだろうか?
ネタなのか、ベタなのか、本当にわからない。新しいソフトを買った方がいいのだろうか。