26年前の「現代思想」誌

手元に「現代思想」誌の1982年1月号がある。特集テーマは、ジュリア・クリステヴァの来日を受けて組まれた「現代フランスの思想」である。
この号に、フェリックス・ガタリを迎えて、精神科医・森山公夫と仏文学者・蓮実重彦による鼎談が掲載されている。
そこでガタリは、いま(当時)、フランスやドイツに「右翼による新しい形のナショナリズムの浮上」「ファシスト的な人種差別的な動き」があると憂慮を表明し、また、イタリア共産党が「民族主義的な政策」や組合の権益保護に走っていることを批判的に指摘しながら次のようなことを言っている。

ですから、私としては、左翼にも、また一般的に知識人層にもみられる一種の保守化現象は展望の欠如、つまり今日の社会情況を変えるには何の名において、どんな社会に向かうべきかということが分からないことに起因していると考えるのです。

そしてこのあと、後にネグリが『〈帝国〉』で展開してみせるような運動の展望についても述べている。
私がこの逸話を持ち出したのは、80年代だって、言うべきことは言われていたし、それが蓮実重彦によって訳されてもいたということだ。
ただ、それを読む側の問題というものがあった。
それにしても、この雑誌を買った頃生まれた子供が、今ではもう立派な大人かあ。
年をとるわけだなあ、なーんてね。
いやいや、あの先輩のことを思えば、自分はまだまだ青二才さ。