哲学

アガンベン『ホモ・サケル』より、善の端初

アガンベン『ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生』(以文社)の冒頭で、アリストテレス『政治学』を引きながら述べている文章を読んでいて感じたことがある。本書でアガンベンの論じていることと直接の関係はないかもしれないが、思いついたので書き留めて…

哲学とはなにか

今日はエイプリルフールなので大風呂敷を広げてみようと思う。 今年も、勘違いして哲学科に進学してしまった学生諸君がいると思う。私もいまから三十年ほど前に勘違いして哲学科に入って以来、それなりにまじめに悪戦苦闘した挙げ句、さんざんな目にあった学…

コジェーブの日本についての注についてのメモ

ある人に尋ねられて作成したメモ。長いのでお暇な方だけお目通しください。

レヴィナス「エコノミー的な思考」

高熱でうんうんうなっていたら、このあいだ書いたパイドロスの記事にトラックバックが飛んできた。 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120208/1328728552 うわあ、ジャンケレヴィッチだあ、難しいなあ。 実は、僕は『パイドロス』を読みながらレヴィナスを連…

中村雄二郎『西田哲学の脱構築』の西田批判

操作を間違えて日記ごと消してしまったので、あらためて掲載。西田哲学の脱構築作者: 中村雄二郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1987/09/25メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る私が学生だった八十年代当時、西田幾多郎再評…

中村雄二郎によるライプニッツ

中村雄二郎『問題群』より、モナドロジーの要点。メモのみ。 すなわち、すべての実体は、デカルトの物質のような延長ではなく、力を本質として活動するものであり、それ以上分割できない独立した個体つまりモナド(単子)でなければならない。この互いに独立…

「立ったまま考える」科学史家の思想

フランスの科学史家・ジョルジュ・カンギレム(1904−1995)の評伝だが、小著ながら科学認識論(エピステモロジー)と呼ばれる分野の第一人者の人物像と学問、教育活動が生き生きと描かれていて読者を飽きさせない。著者ルクールは、カンギレムの直弟子にあた…

メルロ=ポンティ『知覚の哲学』

病院の長い待ち時間で読んだ。知覚の哲学: ラジオ講演1948年 (ちくま学芸文庫)作者: モーリスメルロ=ポンティ,Maurice Merleau‐Ponty,菅野盾樹出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/07/06メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 49回この商品を含むブログ …

ハイデガーのおさらい

今日の午前中は妻と冷戦状態だったので、以前、自分でメモしたものを読み返してハイデガーのおさらいをした。

カントのアンチノミー7

疲労が蓄積したせいか、いささか投げ遣りな気分。 去年から持ち越しになっていた宿題を大急ぎで片づけておきたい。 アドルノが『道徳哲学講義』で描いたカント弁証論の輪郭を引いてカントのアンチノミー論についてはお終いにする。 テーゼとアンチテーゼの否…

哲学すること

ここのところ貧乏暇なしで忙しいうえに、腹痛(味噌汁の具にしたアサリにあたった)だの風邪(しつこい)だので疲労困憊、とても哲学書など、ましてやカントなど読む気にならなかった。カントは体調のよいときでないと読む気になれないと古人も言っているの…

カントのアンチノミー6 仰げば尊し

カント『純理』のアンチノミー論の導入で、アンチノミーを理性のカテゴリーに即して列挙するとしながら、カテゴリーは十二あったはずなのに、アンチノミーは四つしかないのはなぜか、その説明が分からずに悩んでいた。 http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/201…

カントのアンチノミー5 十二÷三=四

カント『純粋理性批判中 (平凡社ライブラリー)』アンチノミーの導入部分で何が分からないかというと、つまるところ、カントはアンチノミーを理性のカテゴリーに即して列挙するとしながら、カテゴリーは十二あったはずなのに、アンチノミーは四つしかない。そ…

哲学の始まり−−アリストテレス『形而上学』より(写経)

『形而上学』第二章より、有名な箇所を確認した。 ところで、この知恵は制作的ではない。このことは、かつて最初に知恵を愛求した人々のことからみても明らかである。けだし、驚異することによって人間は、今日でもそうであるがあの最初の場合にもあのように…

カントのアンチノミー4

カント『純粋理性批判中』超越論的弁証論、第二章純粋理性の二律背反第一節の冒頭の一行を以下のように読んだ。 私たちは、大きく分ければ第一には、悟性と理性との違いに注意しなければならない。 具体的には以下の点である。 ・純粋な超越論的な諸概念がそ…

カントのアンチノミー3十二引く四は八

『純粋理性批判中 (平凡社ライブラリー)』超越論的弁証論、第二章純粋理性の二律背反第一節の冒頭の一行で躓いたままでいる。ウジウジしていてもしようがないので、冒頭の一行を強引に読んでみる。 冒頭の一行とは次の文である。 ところで、これらの諸理念を…

カントのアンチノミー2なんで四っちゅなんだ?

カントのアンチノミーは四つある。これは読まなくても知っている。学生時代、試験に出るので丸暗記したからである。さすがに中身は覚えていないが、四つあることは憶えている。 この試験を課したのは中島義道先生ではない。私が教わった先生のほとんどは優し…

カントのアンチノミー1韓非子の「矛盾之説」

ただでさえ少ない脳みそが瞬時に蒸発するような暑さである。 だいたいカントなんて、冬場に読むのがふさわしいもの(独断)で、猛暑のさなかに読んでも頭にはいるわけがない。 ところが、福音が訪れた。『純粋理性批判』の超越論的弁証論、通勤電車のなかで…

ハンス・ヨーナスのグノーシス論6

昨年末からハンス・ヨーナス『生命の哲学―有機体と自由 (叢書・ウニベルシタス)』第十一章「グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム」を読んでいた。もう読み終わったのだけれども、自宅のパソコンが壊れて感想を書き付けられないまま今日に至っていた。 初め…

交換的正義と配分的正義

先日、ある講演会で、交換的正義と配分的正義という言葉を聞いて、ありゃアリストテレスだったよなあと『政治学』や『ニコマコス倫理学』をめくってみたけれども、ここのところ忙しくて読書に打ち込めず、両者の位置づけがよくわからなかった。 それならばお…

ハンス・ヨーナスのグノーシス論5

まさかハイデガーで年を越すことになるとは思わなかった。 ハンス・ヨーナス『生命の哲学―有機体と自由 (叢書・ウニベルシタス)』第十一章「グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム」の「古代と近代における反ノモス主義」と題された節の後半でヨーナスはハイ…

ハンス・ヨーナスのグノーシス論4

ハンス・ヨーナス『生命の哲学―有機体と自由 (叢書・ウニベルシタス)』第十一章「グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム」、グノーシス主義の特徴を素描し終えたヨーナスは、いよいよハイデガーとの比較に取りかかる。

ハンス・ヨーナスのグノーシス論3

なにぶん不勉強で、グノーシス主義についてはほとんど何も知らなかったものだから、ハンス・ヨーナス『生命の哲学―有機体と自由 (叢書・ウニベルシタス)』第十一章「グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム」を読んで、へぇぇ、なるほどなあ、と思うことばか…

ハンス・ヨーナスのグノーシス論2

ハンス・ヨーナス『生命の哲学―有機体と自由 (叢書・ウニベルシタス)』第十一章「グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム」、もう読み終わっているのだけれども、忙しくてなかなか感想を書き留められないままでいます。ぼやいていても仕方がないので、少しず…

ハンス・ヨーナスのグノーシス論1

さて、自らに課した謹慎もそろそろとくことにして、通勤電車での読書に戻ります。 何事も勉強である、と言っても2世紀頃のキリスト教の異端思想について雑学的知識をかき集めたところで、日々の暮らしに追われる呆け中年にとって何の得にもならないでしょう…

中村雄二郎「西田幾多郎の場合〈ハイデガーとナチズム〉問題に思う」

先日書き付けた感想文http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20091122/1258893278について、最後の段落に事実誤認があり、追記によって訂正しました。コメント欄でid:kenkidoさんが「元の記事に記されたことを、根本的に改めるべくする程の意義は無いんじゃない…

中村雄二郎の『悪霊』論2

中村雄二郎『悪の哲学ノート』を読んでから、ハンス・ヨーナス『生命の哲学』所収の「グノーシス主義、実存主義、ニヒリズム」という論文を読んで驚いた。生命の哲学―有機体と自由 (叢書・ウニベルシタス)作者: ハンスヨーナス,Hans Jonas,細見和之,吉本陵出…

中村雄二郎の『悪霊』論1

先日、ハンス・ヨナスの講演録『哲学・世紀末における回顧と展望』を読んでみたのは、グノーシス主義というものについて気になったからだった。 それというのも、こんな事情があった。私の通勤電車読書生活にとって今年いちばんのイベントは、ドストエフスキ…

覚えておいてよ、ヨナス君

厄介な仕事が一区切りついたので、通勤電車での読書を再開。いきなり難しい本を読むと目が回るので、まずは肩慣らしに薄い本にした。哲学・世紀末における回顧と展望作者: ハンスヨナス,Hans Jonas,尾形敬次出版社/メーカー: 東信堂発売日: 1996/08メディア:…

哲学と中国・続

先日、ちょっと読みかけていた中島隆博『哲学 (ヒューマニティーズ)』について日記に書いた。 http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20090709/1247073734 この日記を読んだ方から、「中国哲学」とは何事か、「哲学」とはphirosophyの訳語として明治になってから…