今年の10冊

2008年中に私が読んだ新刊書の中から選びました(順不同)。2007年刊行のものも混じっています。

1.暴力はどこからきたか

暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る (NHKブックス)

暴力はどこからきたか 人間性の起源を探る (NHKブックス)

日記に書きました。
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20080208/1202466129

2.天狗はどこから来たか

天狗はどこから来たか (あじあブックス)

天狗はどこから来たか (あじあブックス)

日記に書きました。
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20080408/1207647616

3.哲学者ディオゲネス

哲学者ディオゲネス -世界市民の原像- (講談社学術文庫)

哲学者ディオゲネス -世界市民の原像- (講談社学術文庫)

ディオゲネスが偽金づくりにかかわったという伝承を糸口にして、断片的なエピソードばかり語られてきた謎の哲人の思想を、プラトンアリストテレスと対比させながら大胆に再構築する。ギリシア哲学には疎いので、どの程度まで著者の推論が当たっているかは判別できないが、仮に学問的なホラ話であったとしてもたいへん面白かった。

4.南京事件論争史

あくまでも印象論だけれども、今年は新書が不作だったように思う。そんななかで、この本は豊富な内容が初心者にもわかるようにコンパクトに整理されていて、いかにも新書らしい新書だった。そう思うのも、新書とは一般向けの啓蒙書たるべし、という固定観念が私にあるからかもしれないが。

5.江戸歌舞伎の怪談と化け物

江戸歌舞伎の怪談と化け物 (講談社選書メチエ)

江戸歌舞伎の怪談と化け物 (講談社選書メチエ)

たいへん面白かった。同好の士には一読をお薦めしたい。
上記5.に関連して『奇談異聞辞典 (ちくま学芸文庫)』が文庫化されたことも嬉しかった。こちらは江戸時代の随筆などからのゴシップの抜き書き。かつて江戸怪談にはまっていた頃、こんな便利なものがあるとはつゆ知らず、日本随筆大成をせっせとひっくり返したのも懐かしい思い出。

6.正義篇

表象メディア論講義 正義篇

表象メディア論講義 正義篇

バブル文化論―“ポスト戦後”としての一九八〇年代』の著者による現代の倫理、というか、現代社会(思想)の基礎知識的な内容。もちろん類書はたくさんある。講義録を編集したものだそうだが、まことに饒舌。類書の中から本書を推したのは、その饒舌さから著者の危機感がひしひしと伝わってきたからである。

7.カムイ伝講義

カムイ伝講義

カムイ伝講義

これも講義録。杉浦日向子亡き後、江戸を語らせたらやはりこの人か。『カムイ伝』を題材に近世社会を縦横に語る。一読後、カムイ伝全巻を買いに古書店に走ったが、分量と値段に圧倒されてしおしおと手ぶらで帰った。

8.亡霊としての歴史

むしろ「呪術としての人類学」という感じ(悪口ではなく、内容を読んでの印象)。

9.教育改革の迷走

教育再生の迷走

教育再生の迷走

そのものズバリの題名。主に安倍政権下での教育再生会議の迷走ぶりをフォロー。自説について、初出から時間をおいて検証している点もよい。

10.私がまだ読んでいない面白い本

正直言って今年は、新刊でコレ!という本にあまりめぐりあわなかった。もちろん、年末に自宅を引っ越すことが決まっていたので必要以上に買い込まないようにしていたということもあるけれども、それにしても書店店頭で食指が動くという経験が少なかった。既に定評ある著作の翻訳や新編集ものを除くと上記の通りで十冊目が思い浮かばない。賢者のご教示を待つ。

番外

わたしは花火師です―フーコーは語る (ちくま学芸文庫)

わたしは花火師です―フーコーは語る (ちくま学芸文庫)

フーコー『知への意志』読書会、まだ受付中です。
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20081123/1227412787