「欧米か」

某大学のホールに出かける。
壇上には、一本のマイクを挟んで真面目な人柄で知られる教授と、テレビで見かける漫才師、タカアンドトシの片方。
変わった取り合わせだな、と思うが、大学の共同研究か何かで「笑い」がテーマになっているんだ、あの先生はそのシンポジウムに駆り出されちゃったんだな、と納得する。
教授が「フランスの哲学者、ベルクソンに『笑い』という有名な書物があります」と話し始める。
会場の聴衆はシーンと静まりかえって話を聞いている。
おっ、この先生のベルクソン論は聞いたことがないぞ、楽しみだな、と思っていると、ベルクソンはほんのマクラで話はすぐにフロイトに変わってしまう。ははーん、ここからデリダに入るんだなと思ったところで、漫才師が「欧米か」とツッコミを入れる。そのとたん、会場は大爆笑。
教授は興味津々という顔をして、「いまの発言がどうして笑いを引き起こすのか、ご説明いただけませんか」と漫才師に問いかける。
漫才師はちょっと驚いた顔をして「いやいやそれは」と首を横に振る。
教授がなおも「そこを何とか教えてください」と重ねて促すと、漫才師は「それを説明したらお笑いにならないんですよ」と言って逃げ出す。
教授「そうおっしゃらないで、是非」
漫才師「いやいや、勘弁してください」
花道を逃げる漫才師と追う教授に会場は笑い転げる。
可笑しかった。笑いながら目が覚めた。
こう書きだしてみると、狂言みたいだ。