イプセン『野鴨』

イプセン『野鴨』を読み終わる。
正義と幸福との対立を巧みに描いていて、アドルノ先生が推奨するのも、なるほどと思う。
ただ、『人形の家』や『幽霊』もそうだけれども、イプセンの作品はテーマ先行で受け取られやすいが、実際に読んでみるとセリフ劇として丁寧につくられていて、チェーホフと比べても遜色がない。テーマ性にだけ着目して、伏線を生かした作劇や人間心理への洞察を見ないのはもったいないと感じた。この感想はもちろん自戒としてである。