空気人形

一仕事終えたので、去年だか一昨年だか、たいそう評判になっていた「空気人形」(是枝裕和監督)を、妻の留守中にこっそりDVDで視聴。

空気人形 [DVD]

空気人形 [DVD]

主演のペ・ドゥナ(漢字では「裴斗娜」と書くらしい)は、「リンダリンダリンダ」と「グエムル」で見ていて、演技力と独特の存在感が気にいっていた。それだけに、ペ・ドゥナのプロモーション用イメージビデオかと思うほどの本作にもたいへん満足した。
この作品についての批評の最大公約数は「詩的な映像で描いた現代の寓話」というところだろうし、それは間違ってはいないが、私は本作の寓意を読み解く(あるいは本作に自分の願望や感情を投影する)ことにあまり気乗りがしない。
屁理屈をこねれば、作中で高橋昌也演ずる老人が空気人形のぞみに教える吉野弘の詩「生命は」にあるように、媒介の物語である。媒介としての風、空気、息、は心(霊魂)のメタファーである。
とりあえず、それだけ。
とにかくペ・ドゥナの魅力が全編に美しく描かれていて満足した。
ラストシーンでの星野真里演ずる若い女のセリフ「きれい」が、この映画についての私の感想を言い表している。
残念だったのは、この作品は映画館で見るべきだったということ。
映画館の大きなスクリーンの前で、ぽかんと口をあけて、ペ・ドゥナの個性的な美貌に見惚れ、人形みたいなぎこちない動きやたどたどしい言葉づかいにドキドキし、ああ空気が抜けるとしぼんじゃうとハラハラする、そういう時間を過ごしてみたかった。