中村雄二郎氏死去

新聞によれば、哲学者の中村雄二郎氏が亡くなったそうだ。
今朝の新聞の記事は簡単なものだったから、いちいち抜き書きはしない。やがて詳細な追悼記事が出るだろう。
私が中村雄二郎氏の著作を読むようになったのは、高校生の頃、中公新書から出ていた『哲学入門』を手にしてからだった。演劇と哲学を結び付けるアイデアの面白さに夢中になり、『言葉・人間・ドラマ』や『チェーホフの世界』などを古本屋で探し出し、その後は中村氏の新刊が出るたびに追いかけるようにして読んだ時期があった。
中村氏の盟友・山口昌男氏との対談本や、折々に『現代思想』誌などに掲載された対談や座談も面白く読んだ記憶がある。大学生の頃は、中村氏の受け売りを友達の前で吹聴する軽薄なこともした(もちろん軽薄なのは私の方である)。
やがて、期待が大きすぎたためか、『魔女ランダ考』に煮え切らぬ印象を持ち、『悪の哲学ノート』あたりから氏の著作を追いかけるのをやめた。もっとも、それも軽薄な若者の無自覚な傲慢のなせるわざであって、今読み返せば違う印象をいだくかもしれない。
中村氏本人もどこかで書いていたはずだが、敗戦直後の獄死によって中断された三木清『構想力の論理』のプログラムを継承したのが中村哲学の特徴だったとは言えるだろう。