近況

昨日の朝、老母に電話したらもう起きていて、「お父さんが起こしてくれたの。オーイと呼ぶ声がしたの」という。父は七月に死んだ。
これを夫に先立たれた老婆の幻聴というはたやすいが、私は「よかったね。お父さんが起こしてくれたんだね」と応えた。
こうしたことはしばしばあって、もう驚かない。
父は亡き祖母とともに暮らしていたし、いま母は亡き父とともに暮らしている。
しばらく前の日記を読み返したら、こんなことを書いていた。

あと数年もすれば、親の介護やら何やらで本など読んでいられなくなるでしょう。その前に少しでも積ん読状態のものを消化しておきたいものです。

http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20090409
当時はのんきにアリストテレスを読み返していたのだった。
あれから八年、心配していた通りになり、本を読む時間はすっかり減ってしまったし、厚い本を詰めたカバンを持ち歩く体力もなくなってしまった。
先日、カントの『永遠平和のために』を読み返していたら、あれ、ベンヤミン『暴力批判論』の神的暴力とはもしかしてこのことも念頭に置いているのかと思ったこともあったのだが、あらためて両書を読み比べて考えをまとめるひまもない。