新聞の怠慢

マスコミはカウントダウンをはじめたらしい。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/archive/news/2006/11/20061102ddm005010080000c.html
http://www.asahi.com/politics/update/1102/002.html
毎日新聞の記事では未履修問題が、朝日新聞の記事ではいじめ問題が問題となっていることに触れているが、そうしたことと教育基本法改正がどう関係があるのか、またはないのかということについてはなにも述べない。
毎日新聞の記事はこうだ。

特別委では履修不足問題が主要テーマとなっているが、与党は救済策が1日固まったことで、早期採決の環境が整ったと判断している。
 一方、野党側は履修不足問題に集中させることで「時間稼ぎ」(公明党幹部)に出るこれまでの戦術を踏襲し、さらに同問題で突っ込んだ質疑を行う方針。公聴会をもう1日開くよう求めるなど、できる限りの審議引き延ばしを狙っている。

朝日新聞は次のような扱い。

これに対し民主党は、地方公聴会のほか、9日以降に中央公聴会の開催や参考人質疑を行うことも要求。政府の教育再生会議座長の野依良治氏やいじめ問題の専門家らを呼んで質疑する案も浮上している。

つまり、未履修問題もいじめ問題も与野党間の審議日程をめぐる駆け引きという文脈の中で報じられている。もはや政府案成立は既定のコースであって、新聞社の関心はもっぱら採決のタイミングとスタイルにのみ集中しているようだ。
もっとも、政府案成立が既定のコースであることは当然の判断ともいえる。議会制民主主義の前提に立つ限り、前回の国政選挙の結果が出た時点で、政府与党は衆議院において圧倒的な優位を得た。もっともあれは郵政民営化しか争点にならなかった選挙だからと留保を付けたいところではあるが、結果は結果である。
しかし、だからこそ、多数派の専制をチェックする上でも、たとえ強行採決されようがどうしようが、審議の過程で政府提出法案の問題点を明らかにするのが野党議員の努めであろうし、もしそれすらなされていないとしたら、かくもお粗末な議論しかなく重要法案が衆院を通過しようとしていることを報知することが新聞社の仕事ではないのか。
どうせ決まるんだから反対したってしようがないとは子供じみた考えから出る言い草であって、人間の行う決定は、いかなる決定も未来永劫不変にして普遍ということはない。ましてや国際化の時代に対応するためと称して日本的特殊を強調する政府案は、成立しても遠からず矛盾を来すだろう。十年先か二十年先かはわからないが、再度見直しがはかられる時期が来る。
その際、このバカげた改正案が国会でどのような審議をされたのかは大事な検討材料になるだろうし、この歴史の曲がり角に立ち会っている私たちにとっても、それを知り記憶しておくことが、将来のためにどれほど大切かはわからない。
こうしたニーズに応えようとする気持ちを失うことは、新聞の怠慢といわざるを得ない。