合成河童の夢

誰かと一緒に街を歩いている。都心ではなく、なだらかな丘陵を開発した郊外の街。多摩センターか多摩プラザのどちらかからどちらかに向かって歩いているつもりだが自分がどこにいるかはわからない。現実の多摩センターと多摩プラザは名前は似ているがまったく違う町で、かなり離れたところにあって歩いてはいけないのに夢のなかではそれに気づいていない。
誰か同行者がいるのだが、誰かはわからない。繁華街を見下ろせる丘の中腹に広い公園がある。
公園の奥に、市街地にある小さな美術館のような建物がある。同行者が行ってみようというのでなかに入ると、ナントカ記念資料館となっていて、誰か科学者の業績を讃えてつくられた研究所の付属施設だとわかる。受付に老人が二人いて、入館者の案内をしてくれる。一人は最近テレビで原発の解説をしている人に、もう一人は何年か前にノーベル賞をとった某教授に似ている。
この施設では研究所の研究成果を一般に公開する目的で展示しているとのことで、一番人気のあるのは河童だという。指差された方を見ると中庭がある。外から見た時は小さな建物に見えたが、奥は広いのだなと感心する。中庭には池があって、大理石の大きな水盤のうえに何か生き物がいる。おとなしいから大丈夫ですよと言われて近づくと、ラッコのような動物がうずくまっている。案内の老人は、これが研究所で生まれた河童です、という。
胴体はダックスフントみたいで、短い手足の指には水かきがある。頭は全然似てないのだけれども猿を思わせる。毛の色は茶色。そいつが水盤の浅い水に半身を浸しながら、黒い目でこっちを見ている。見ようによっては可愛いかもしれないが、河童のミイラと呼ばれるものはカワウソの胴体に猿の頭を付けた造りものだという話を思い出して、それを剝製じゃなくて生身でやっちゃったのかよと思うと少し気持ちが悪い。
外に出て、あれが河童ねえ、と首をかしげたところで目が覚めた。