馬場あき子『鬼の研究』

今週のお題「おすすめの本」
たまには、はてなの会社につきあおうと思って、何か気の利いた本はないかと考えてみた。しかし、「今まで読んだ中で面白かった本や、他の人にも読んでほしい本とその理由をブログに書いて教えてください」ということだが、他の人にも読んでほしい理由というのが思いつかない。
一方で、「今まで読んだ中で面白かった本」はたくさんありすぎて書き出しきれない。読んだ本はどれもそれなりに面白く、その理由もそれぞれだ。
けっこう困る条件だ。
このブログでよく取り上げたのは中国古典から『韓非子』と『史記』、ドイツ哲学からカントとベンヤミン、といったところだろう。だが、当然のことながらそういう本だけ読んで暮らしているわけではない。
あれこれ考えすぎた挙げ句、馬場あき子『鬼の研究』に思い当たった。

鬼の研究 (ちくま文庫)

鬼の研究 (ちくま文庫)

いまは筑摩書房なんだなあ。私が最初に読んだのは図書館にあった三一書房の単行本、その後、学生のときに買ったのは角川文庫(般若の面が怖い)。
とにかく話題豊富で面白いし、文章も独特の迫力と色気があってまさにテーマにふさわしい。
議論の内容の細かいところには現在の民俗学・宗教学の研究者からは異論が出ているようだが、学問的な正確さはともあれ、日本の神話・伝説・文学・芸能における「鬼」の全体像をぐいぐいと描き出したこの作品にはそれこそ鬼気迫るものがあり、記念碑的著作と言っていいのではないか。
この本だったらたいていの人にすすめられる。面白いし、読んでおいて損はないし、もしかすると得することもあるかもしれない。
お薦めします。