2014年のクリスマスイブ

妻が台所を占拠してから一時間がたった。
「火を点けなきゃ」という声が聞こえてきた。
そうか、これから煮炊きにとりかかるのか。
どういう理由か知らないが、妻は毎年、クリスマスの御馳走をつくりたがる。
時間も費用もかかるので、出来合いの総菜でいいじゃないかと猫なで声で説得するのだが、今年もそれは無視された。
ただ、今年は一つだけ進歩があった。ケーキ作りをあきらめさせることに成功したのである。
もっとも、休日ならいざ知らず、共働きで夜八時まで仕事をして帰宅してからの調理だから、あれもこれもはできない。それは毎日晩ご飯をつくっている私がいちばんよく知っている。
とはいえ、もう十時も過ぎて、さすがに腹が減ってきた。
近所のスーパーには半額になったローストチキンや洋風オードブルが山積みなのである。あれを買ってくれば、費用も安くすみ、今頃、食後のお茶を飲んでいる頃だろう。
台所が立ち入り禁止になっているので、大好きなインスタントコーヒーも飲めない。

今年のプレゼント

何度か虚礼廃止を主張したのだが妻に受け入れられず、結局、サプライズはやめて、お互いのニーズに合わせて必需品を贈りあうことになっている。
妻から私へは、ベルト二本(スーツ用とカジュアル用)、靴下(確かにクリスマスらしいが、もちろん中には何も入っていない)。
私から妻へは、滑り止めのスパイクのついたブーツ。見た目は普通の婦人用ブーツだが、靴底に仕込んであるスパイクを出せば氷の張った道でも平気だ(暗器ではない)。
こんなこともあろうかと昼飯を多めに食べておいたのだが、それにしても腹が空いた。
洗面所は出入りできるので水を飲んでいる。
冬場は水分摂取が減り気味なので、痛風持ちの私にはよいことだ。
妻の料理は食材の使い方が豪快で、その割に下ごしらえにしっかり手間をかけるので、味付けはシンプルだが美味いし、盛り付けもきれいだ。出来上がったらさぞかし素晴らしいご馳走になるだろう。
だが、まもなく十時半、今夜中にありつけるのだろうか。

妻の「男の手料理」完成です

結局、十一時に完成。ローストチキン(赤飯詰め)、キュウリのピクルスと人参のサラダ、南瓜のスープ。

丸ごと一羽の鶏の中に詰め込んだ赤飯とサツマイモに脂が染みて美味かった。