10月28日付け朝日新聞社説

以下、昨日の朝刊に掲載されていた朝日新聞社説。
http://www.asahi.com/paper/editorial20061028.html#syasetu1
話のタネのために丸写し。自分の意見(イヤミ)はまた後ほど。

教育基本法 改正案はやはり疑問だ

 教育基本法について、政府の改正案と民主党案の実質審議が来週から再開される。先の通常国会で50時間近く審議したが、先送りとなった法案である。
 与党からは「あと20時間ほど審議をすれば十分」という声が聞こえてくる。安倍政権の最重要法案として、この臨時国会でなんとしても成立させたいということだろう。
 教育基本法の改正に対し、私たちはこれまで社説で、いくつかの疑問を投げかけてきた。
 いまの教育に様々な問題があるのは確かだ。学力が下がっている。いじめや不登校は絶えず、荒れる学校は少なくない。しかし、そうした問題は教育基本法が悪いから起こるのか。教育の問題を法律の問題にすり替えていないか。きちんと吟味した方がいい。
 「愛国心」の問題もある。国を愛する心は人々の自然な気持ちであり、なんら否定すべきものではない。だが、法律で定めれば、このように国を愛せと画一的に教えたり、愛国心を子どもに競わせたりすることにならないか。民主党案も表現は異なるが、愛国心を教室で教えようとする点では大きな差はない。
 そうした疑問は、先の国会の審議を聞いても解消されなかった。
 政府の改正案で掲げた「教育の目標」は、愛国心だけではない。道徳心、伝統と文化の尊重など、20余りの徳目が並んでいる。そうした心のあり方にかかわる徳目を法律で定めていいか。愛国心と同じように画一的に教えることにつながらないか。これも気がかりだ。
 現行法は「教育は不当な支配に服することなく」と教育の独立をうたい、国の介入に歯止めをかけている。
 この文言は改正案でも残されたものの、「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」とわざわざ加えられた。これによって教育の独立が薄められることはないのか。こうした論点は十分に審議されていない。
 教育基本法は、「忠孝」や「義勇奉公」を説いた戦前の教育勅語に代わって、新しい教育の指針としてつくられた。「個人の尊厳」や「自主的精神」を重んじることを盛り込み、教育の機会均等や男女共学を掲げた。
 前文と11条しかない短い法律で、あらゆることを定めているわけではない。社会は変わり、新たな問題も出てきた。愛国心を盛り込むことに抵抗がある人の中にも、公共の精神が大切なことを強調すべきだと考える人もいるだろう。
 安倍政権の発足直後の世論調査で、基本法は「今国会にこだわらず議論を続けるべきだ」が3分の2にのぼった。
 基本法を変えるとすればどこなのか。変えなければ、できない政策があるのか。そうした肝心なことで国民の一致点がまだないということだろう。
 日本の未来を担う子どもをどう育てるか。成立を急ぐ余り、大きな方向を誤ってはならない。

http://www.asahi.com/paper/editorial20061028.html#syasetu1