怪獣探検珍道中記

著者は同世代。こういう浮世離れした話が好きな人が多いのはどういうわけだろう、と思いながら読む。

怪獣記

怪獣記

ベテランジャーナリストが謎の未知動物(ネッシーのたぐい)を追ってトルコまで調査に行く、怪獣探検珍道中記とでもいうべきちょっと怪しげなノンフィクションなのだが、これが非常に面白かった。
トルコ東部の湖、ワン湖に未知の水棲動物らしきものがいるのだそうだ。名前はジャナワール(トルコ語で「怪獣」という意味)。目撃者がいるだけではなくビデオ撮影もされているようだ。だが著者は容易に腰を上げようとしない。マスメディアが作り出した共同幻想ではないかとまず疑う。次にトルコ事情に詳しい大学院生の助けを借りて文献に当たる。下調べをすませた上で、怪獣の調査報告書の著者とビデオ撮影者へのインタビュー取材を中心に調査計画を立てる。このあたりが実に冷静で好感が持てる。
さて、辺境が大好きというカメラマンも加えてトルコに飛んだ一行を待ち受けていたものは怪獣よりよほど怪しげな人間模様だった。それでも予断を持たずに探求しようとする著者らは現地の目撃者の聴き取り調査を始める。その過程で浮かび上がってくるさまざまな問題、はたして怪獣情報はガセか真実か。そして一行はついにあるものを目撃することになるのだが…(これ以上はネタバレになるので自粛)。
一見浮世離れした怪獣騒動に、トルコ社会の世相、現地の人々の生活、クルド人問題などが密接にかかわってくるところも捨象せずに書いている。こういうところも同世代の特徴かなあ。