昨夜の講演会で

昨夜の講演会で、つまらない質問が出た。「教育基本法のせいでゆきすぎた個人主義となり公共心が衰えているのではないか」というもの。
実際の表現はもっと判で押したようなものだった。こういうのをテンプレというのかなあ。
それに対して講師は、公共性の定義にもよるとしながら、おおよそ次のように応えた。
それが公共のマナーという意味であれば、諸外国に比較して日本人がとりわけ公共心に欠けるとは思わない。
共同体の規範という意味であれば、戦前のような共同体のしがらみが強い社会では個人が押しつぶされてしまう。個人主義と利己主義は違うのであって、むしろ個人のないところでは公共性は成立しない。
しかし、公共心を、共同体の束縛を離れた個人が社会や国家に関与していく「主権者としての責任」と捉えるならば、日本ではそれは弱いような気がする。その意味で「主権者としての責任」を教えることは教育上重要なことだと思う。
ただ、現行教育基本法にも第一条(教育の目的)に「平和的な国家及び社会の形成者として」とあり、また、第八条(政治教育)には「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」とあって、教育基本法のために公共心が欠如したとは言えない。
この講師は、著名な割に誤解されていることが多いように見受ける。私が誤解に輪をかけることはしたくないので、講演内容について詳しくは述べないが、駄々っ子のような質問にもていねいに応えていたのが印象的なのでメモしておいた。