焼き肉パーティー

何人かで関東近郊のどこかを旅行している。
帰りがけにご一緒したS氏が山に行きたいと言い出す。同じ旅館に泊まっていたらしい若い女性とそのお姉さんらしき人にも、私たちも行くから是非と誘われる。紺の法被を着た旅館の人が道を案内してくれる。
自動車でなだらかな丘陵のようなところを抜け、着いたのは広々とした野原。そこに、木材で作ったビルの骨組みのような構築物がある。旅館の人はこれが山だという。これが山?と思ったが旅館の人に「頂上で焼き肉ができます」と言われて、四人で木製の巨大ジャングルジムを登る。
階段や梯子はない。螺旋状の通路をだらだら登っていくと、天辺には細長い鉄板をいくつも渡した大きなテーブルのようなものがあり、ここで下から火を燃やしてバーベキューのようなことができるらしい。
旅館の人が下で火を焚いているらしく、煙の匂いがし、やがて鉄板が熱くなってくる。三人は熱くなった鉄板にステーキ肉を並べていく。よけいな油は鉄板の隙間から下に落ちるのがよい工夫だな、と感心する。S氏がリュックサックから赤ワインを取り出して肉に振りかけるとジューッと音がして蒸気と煙が上がる。
木が焦げる臭いがして、ふとどこで火を焚いているのだろうと気になる。はるか下の地面で火を燃やしているのだ。この大きな櫓に使っている材木に火が燃え移ったら大変ではないか。見ると、すでに黒く焦げてぶすぶす燻っている柱もある。のんきに焼き肉パーティーなんかやっている場合じゃない、と思い、あわててS氏らをせかして櫓を降りる。
下に降りてみると、夕焼けの中に、火事場の跡のような焼けこげた骨組みだけが黒々と立っている。
二人の女性も旅館の人も、いつの間にかいなくなっている。
まわりを見回すと京王線の駅がある。S氏と電車に乗って、笹塚にいい店があるからなんか食べて帰りましょう、と話す。