福岡大学の怪談

福岡土産がもう一つあったので、忘れないうちに書き留めておこうと思う。
姪っ子から聞いた学校怪談である。
場所は福岡大学の校舎。
急死した理系の教授の幽霊が白衣を着た姿で現れるのだそうだ。
これは噂だけれども、次のは我が姪っ子の実体験である。
夏休みに用事があって、幽霊が出ると噂の校舎に一人で出かけたそうだ。
ひとけのない校舎はしんと静まりかえっていて、何やら不気味な気配もしたそうなのだが、度胸があると誉めるべきか、不用心と叱るべきか、我が姪っ子殿は誰もいない教室で昼寝をはじめたのだそうだ。
しばらくすると、廊下の方から聞こえるハタハタハタという足音に眠りをさえぎられた。うるさいなと思っていたら、聞こえてくる方向が一定しない。右から聞こえたかと思うといつの間にか左から聞こえる。前後左右から断続的に、ハタハタと足音がする。
ぼんやりしていた彼女もさすがにアレッ?と気がついた。この教室に自分が入ってきたときには誰もいなかった。廊下でも誰ともすれ違っていない。たとえ校舎内に他に誰かいたとしてもせいぜい一人か二人、こんなに足音があちらこちらから聞こえるはずがないのだ。
まわりを見回したが、人のいる気配はない。
かすかに足音だけが聞こえる、ハタハタハタハタタタッ。
のんびり屋の彼女もさすがに気味が悪くなって、大声で陽気な歌を歌ったのだそうだ。そうしたら足音は止んだ。
後日、友達から、あの教室にはタキシードを着た霊がいると言っていた人がいた、という話を聞いて震えあがったのだという。
「おじさん、あたし取り憑かれてないかな」
「眠ったのはまずかったけれど、歌を歌ったのはよかったね」
「えー、なんでなんで?」
入眠幻覚に、無関係の霊視話がくっついた様子だったので、その種明かしをしたら、たちまち元気になって、箱崎宮放生会でお化け屋敷に行くと言って出かけた。懲りない姪っ子であった。