ちらほらと「今年の何冊」を挙げておられる方々がいて、私もそろそろと思いながら、今年はちょっと困っている。例年通り、今年刊行された新刊の中から選ぼうとすると、10冊そろわない。
他の方はどうされているのかと見てみると、「自分が今年読んだ本」の中から10冊選ばれている方もいる。私も最初からそうしておけばよかったのにと悔やまれるが、今さら方針を変えるのも口惜しい。
そこで、次善の策として、今年、文庫で再刊されたものも含めさせてもらう。
番号を振ってあるが意味はなく、順不同。
1.バウッダ[佛教]
- 作者: 中村元,三枝充悳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/12/10
- メディア: 文庫
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2.『純粋理性批判』を噛み砕く
- 作者: 中島義道
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/08/05
- メディア: 単行本
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3.奇談雑史
- 作者: 宮負定雄,佐藤正英,武田由紀子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/09/08
- メディア: 文庫
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こういう話が大好きなので。
4.再生産について
再生産について 上 イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置 (平凡社ライブラリー)
- 作者: ルイ・アルチュセール,西川長夫,伊吹浩一,大中一彌,今野晃,山家歩
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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再生産について 下 イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置 (平凡社ライブラリー)
- 作者: ルイ・アルチュセール,西川長夫,伊吹浩一,大中一彌,今野晃,山家歩
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/10/08
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アルチュセールのイデオロギー論は、狭い意味でのマルクス研究を越えて、いろいろな分野で利用されていることは知っていたが、今回読んでみて、思っていた以上に重要な著作であると感じた。安易な感想は差し控える。
5.西巷説百物語
- 作者: 京極 夏彦
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/07/24
- メディア: 単行本
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江戸が武士中心の町なら、大阪は商人をはじめとする町人の町である。登場するのは船問屋の主、両替商の息子、刀鍛冶、浄瑠璃の人形遣い、庄屋、造り酒屋、船宿の女将、この面々の持ち込む奇妙な依頼に挑むのが帳屋(文具商)の林蔵とその怪しげな仲間たち。「強気にならんと負ける」、「呑みに掛かって来たら呑み返せばええのんや」、「貧乏は負け」、「お互い様やないか。狐と狸の化かし合いやで」、そんな赤裸々なセリフが飛び交う。欲に目がくらみ我を忘れた人々の悪あがきがこの世のものとは思えぬ怪異を呼び込む。怪異に踊る人々に林蔵が啖呵を切る。「勘違いしたらあかんで。やられたらやり返す、喰われたら喰い返す、世の中あんたみたいな人ばかりと思たら大間違いや」。痛快時代劇である。
6.パウロの政治神学
- 作者: ヤーコプ・タウベス,高橋哲哉,清水一浩
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/08/28
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本書の成立事情は一つのドラマだ。著者タウベス(1923-87)は、ドイツ生まれのユダヤ人で、アメリカ、イスラエル、ドイツの大学で宗教史やユダヤ教を講じてきた碩学だが、晩年、ガンに冒され余命いくばくもない身体に鞭打って行った連続講義の記録が本書である。講義の行われた数週間後にタウベスは没した。本書はいわば彼の遺書のようなものであり、若い世代に何かを伝えたいという気迫が全編にみなぎっている。本書は内容においてもドラマに満ちている。政治神学という視点は、ナチスに関与したことでも知られる政治学者カール・シュミットのものである。本書ではタウベスとシュミットとの浅からぬ因縁が語られ、「ローマ書」解釈をめぐって両者の思想的対決が行なわれる。また、ベンヤミン、アドルノら20世紀思想史の巨匠たちとの交流を踏まえた議論も展開される。「今だから話せる」といった貴重なエピソードもあって飽きなかった。
7.和辻倫理学を読む
- 作者: 子安宣邦
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2010/08/24
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和辻『倫理学』は、現在では岩波文庫で四分冊で刊行されているが、元来は上・中・下の三巻本として、上巻は戦前の昭和一二年(一九三七)、中巻は戦中の昭和十七年(一九四二)、下巻は戦後の昭和二四年(一九四七)に刊行されている。そして敗戦の翌年、「和辻は中巻第四刷の刊行に当たって中巻の修正をほどこした」、このことに著者は着目する。何を?どのように?なぜ?修正したのか、それはどのような意味をもつのか。和辻倫理学の構想にさかのぼり、その展開をたどりながら、和辻と昭和という時代との関わりを読み解いていく。著者は和辻『倫理学』を「異様」と評しているが、歴史への深い洞察と推理小説のような謎解きの面白さを兼ね備えた本書もまた別の意味で異様な一冊である。
8.ミドルクラスを問いなおす
- 作者: 渋谷望
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2010/08/06
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9.ゴーレムの生命論
- 作者: 金森修
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/10/16
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著者がゴーレム的なものに着目するのは、「人間未満の人間」という問題系を浮かび上がらせるためである。そのために第一部ではユダヤ教に伝わるゴーレム伝説をやや詳しく取り上げ、第二部ではS・モーム『魔術師』、映画『エイリアン』、ホフマン『砂男』、チャベック『ロボット』などの人造人間や怪物のイメージに「ゴーレム的なもの」の残響を聴き取る。文学や映画などにおける表象を取り上げるのは、「虚構や仮象を介して事実を見たときの方が、事実そのものの地平がより遠くまで見通せるということもある」からだという。確かに事実や史実を掘り下げるだけでは見えてこない問題の拡がりというものがある。本書第三部「ゴーレムよ、土に帰れ」では、「ゴーレム問題の圏域自体に拡がりと多様性を与えること」によって、生命のようなもの(未然の生命)、人間のようなもの(亜人間)という領域に光をあてる。それは、生命をもてあまし、もてあそび、切り捨てる人間のあり方を問いなおす契機を見いだすための試みである。
10. 切りとれ、あの祈る手を
切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話
- 作者: 佐々木中
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/10/21
- メディア: 単行本
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http://d.hatena.ne.jp/matsuiism/20101202
来年はどんな本を読むことになるのだろう。
追記・番外.正義論
新刊書店で買って読んだ本に限ったので上のような結果になったが、買っちゃったけれども読んでいない本もある。そのうちの一冊は、やはり今年のニュースとしてふさわしいもののように思われるので、見栄を張ってあげてきたい。
- 作者: ジョン・ロールズ,川本 隆史,福間 聡,神島 裕子
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2010/11/18
- メディア: 単行本
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まだ読んでいないが、感想はある。厚くて重い。