「私は幽霊を見た」in静岡

週末に静岡市で開かれた「累の会」に参加してきました。
全体の様子は『死霊解脱物語聞書』監修者の小二田先生(静岡大学)のブログをご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/koneeta/e/4bac0646bc5ee478493231f672c09daa
私が参加したのは夜の部からで、座談会に出席しました。写真は上記、小二田先生のブログから。
皆さん、そうそうたる顔ぶれで、私だけ怪談業界の前線から離脱してもう十数年ですから、何を話してよいかわからずにしどろもどろでした。
左から二人目、ネクタイをしているのが私です。どうしてこんな格好をしているかというと、昼間は会社の仕事で静岡のお得意様へ挨拶回りをしていたからです。
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いやあ、なんだかちょっと変な雰囲気ではあったんですよ。
『幽』編集長の東さん(写真中央)のお話を中心に、いろいろな話をしていたのですが、写真では左端にいた鈴木大治さん(一人芝居「累の怪」の演者)が、『死霊解脱物語聞書』に登場する助(すけ)という子どもの亡霊が興味深いという話を始めたら、写真右端にいた前島哲也さん(妖怪ミイラショーの演者にして人形師)が、母と子の霊的関係を熱く語りはじめたのですね。
で、その合間に、僕は何だか気分が悪くなって、「自分の経験では、子どもの霊の話はあんまりしないほうがいい、さっきから寒気がしていけない、こういう話も続けるべきかどうか」なんて、魔がさしたように口走ってしまったのです。
実際、子どもの霊の話っていうのは、どうもよくない。将門公はもちろん、エネルギッシュな累さんとか、凛としたお岩様の話はいくらしてもかまわない。
累さんなんて、『死霊解脱物語聞書』をお読みになった方はお分かりと思いますが、理屈は通るし、世情人情にも通じたご婦人ですよ。主張も、裁きと追悼の要求という、至極まっとうなものですからご説ごもっとも。
お岩様は、私、一度夢枕に立たれて叱られたことがありますので怖くないと言えばウソになりますが、直接の動機は夫の裏切りに対する怒りですから、妻を大事にしている夫に無茶はなさらないと信じています(お岩様、今夜も妻のために晩ご飯を作りました)。
でもね、幼い子どもの霊っていうのはよくわからないんですね。それが死んだ人間の霊魂だとして、自我が確立する前に亡くなっているわけでしょう。どうもとらえどころがないんだな。その上、上手く説明できないんですが、それが死んだ人間の霊魂という前提に確信が持てない。小さな神様かもしれないし、妖怪変化の類いかもしれない。人形のような無生物の精かもしれない。
輪郭がはっきりしなくて、話をしていると話に引かれて、ふっと寄って来ちゃうような気がするんですよ。しかも、話が通じるのか心もとない。
そんなわけで、子どもの霊の話はしないほうがいいと言ったつもりだったんですが、しどろもどろだったので、前島さんの熱弁は止まらず、鈴木さんも自分もいないはずの人の姿を見たという経験を語りだして、私以外のみなさんはたいへん盛り上がっておられた。
その話の流れがフッと途切れたときに、それが出たんですね。
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最初は参加者の連れてきたお子さんが紛れ込んだのかと思いました。でもすぐにそれはありえないことに気付きました。私は会の始まるときに人数を数えていたからです。子どもはいなかった。
それから、はたしてこれは座敷わらしか幽霊かと迷いました。いずれにしてもすぐに消えてしまうのだろうから、目に焼き付けておこうとまじまじとお顔を見たら、とても可愛い。
まったく魅入られてしまって、隣で『幽』編集長さんがのけぞっておられるのも気づかなかったほどです。
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そうしたら、きれいなお声で「うらめしや」と言ったので、ああこれは幽霊ちゃんか、と「了解」いたしました。
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もうね、びっくりしたのなんのって。
おかげで、せっかく新刊『私は幽霊を見た』を持って行ったのに東雅夫さんのサインをもらいそびれてしまったのが残念。