原ファシズムの特徴10 大衆エリート主義

以下、『永遠のファシズム』より写経。

 10 エリート主義は、あらゆる反動的イデオロギーが本質的に貴族主義的である以上、その典型的な要素のひとつです。歴史上、あらゆる貴族的かつ軍事的エリート主義は<弱者蔑視>を伴うものでした。原ファシズムは「大衆エリート主義」を標榜しないわけにはいきません。市民はすべて世界最高の人民に属し、党員は最良の市民であるわけですから、あらゆる市民は党員であるはず(べき)だということになります。しかし平民階級不在の貴族などありえません。指導者は、自分の権力が委託されたものではなく、ちからによって獲得されたものであることを充分わきまえていますから、その力が大衆の弱さに立脚していることも、かれらが「統治者」を立てる必要に迫られるほど弱いことも、知っているのです。集団は(軍隊式の)階級制度に従って組織されるわけですから、下位の指導者はすべからく自分の部下たちを蔑み、その部下たちはさらに下級の人びとを蔑むことになります。こうしたことがすべて大衆エリート主義の意味合いを強固にするのです。
エーコ、前掲書、p54-p55