亡霊となって彷徨うことになるのは

現在進行中の時事問題について発言するのは危険なことである。見通しが外れて大恥をかく可能性があるからだ。
今なら西松事件がそういう話題だ。
この件に関しては、民主党の小沢代表は秘書の拘置期限が切れる来週24日に何らかの判断を示すと伝えられているので、それを待ってからおもむろに御託を並べれば格好が付くだろうが、それでは後出しじゃんけんのようで後味が悪い。
あと数日後には軽率を笑われるかもしれないのを覚悟の上で、いま思いついたことを放言しておく。

一木支隊

先日、ニュースを読んでいたら思わぬところで一木支隊の名が出てきたので驚いた。
「「ガダルカナル」化する特捜捜査」と題された郷原信郎氏の記事で「一木支隊」の事例が引かれていた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090315/189047/

 ガダルカナルの緒戦、わずか2000名の一木支隊は、帝国陸軍の伝統的戦法である「白兵銃剣による突撃」をもってすれば米軍の撃破は容易だと信じて1万3000人の兵力の米軍基地に突撃し、ほとんど全滅した。しかし、「帝国陸軍の不敗神話」を信じた日本軍は、兵力を逐次投入し、2度にわたる総攻撃を行って惨敗を喫し、その後も撤退の決断が遅れたために膨大な数の兵士が島に取り残されて餓死した(『失敗の本質〜日本軍の組織論的研究』戸部良一ほか)。

 そして、ようやく日本軍が撤退の決断をした際、大本営発表は次のように報じた。

 「ソロモン群島のガダルカナル島に作戦中の部隊は昨年8月以降、激戦敢闘克く敵戦力を撃摧しつつありが、その目的を達成せるにより、2月上旬同島を撤し、他に転進せしめられたり」

 今回の事件の捜査の経過と現状が、これまで述べてきた推測の通りなのであれば、展望のないまま捜査をこれ以上長期化・泥沼化させることは絶対に避けなければならない。それは、ただでさえ政治、経済の両面で危機的な状況にある日本を一層深刻な状況に陥れることになりかねない。

 検察は、「特捜不敗神話」へのこだわりを捨てて事件を早期に決着させ、今回の捜査の目的と経過について国民に説明責任を果たすべきだ。そして、政治の世界では、この事件を機に、与野党ともに政治資金の現状についての自主的な調査を行うこと、政治資金規正法の「大穴」をふさぐための立法措置を行うことなど、政治資金の透明化に向けての具体的な方策を講じ、極限に達している政治不信の解消に努めるべきだ。

この記事で参照されている一木支隊については、怪談マニアならすぐに思い当たるだろう次のような話がある。

昭和17年8月21日未明、全滅した一木支隊、幻の帰還
1 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日: 2001/08/11(土) 06:51

昭和17年8月20日、その日は夏の北海道には珍しく不快な湿気と暑さが
旭川の町を覆っていた。
夜になってもいっこうに気温は下がらず、留守部隊の兵士がいつものように
表門歩哨に立ち、門番をしていた。
控えの兵隊たちの話し声が兵舎に響き、ほかには秋の訪れが近いことを告げる
虫の音しか聞こえてこない、静かな夜のことだった。
このとき遙か南方で戦友たちに太平洋戦争の勝敗を決する戦いが
襲っていようとは誰一人思ってもみなかった。(続く)



2 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日: 2001/08/11(土) 06:51

しばらくしてひとりの兵士が大部隊の行進してくる音を耳にした。
軍靴で玉砂利を踏みしめるザッザッという音である。
それがこちらの方へ向かってくるのだ。
やがて将校を先頭に兵士の一団が姿を現した。
青白く能面のように無表情な顔は彼らがすでにこの世のものではないことを
暗示していた...。
この日、昭和17年8月21日午前0時45分、旭川第7師団28連隊(通称一木支隊)は
幻の帰還を果たした。(続く)



3 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日: 2001/08/11(土) 06:51

この話は当時、厳重な報道管制を受けていたにもかかわらず
次の日にはすでに多くの人々の知るところとなり
1〜2週間のうちには市内で知らない人がいないほどになった。
さらに噂は旭川にとどまらず、口から口へと伝えられ、
わずかの間に北海道全土に広まっていったのである。
そして報道管制が解かれた戦後、この事件は大々的に新聞で発表されることになる。
この日未明、衛兵たちはいったい何を見たのか。
(今日はここまで。地元旭川の皆様のレスを期待します)

http://piza2.2ch.net/occult/kako/997/997480261.htmlより。
便宜上、ネット上から拾ったが、松谷みよ子氏の『現代民話考』シリーズにも収集されている有名な話だ。

私は民主党を支持するふりができない

さて、私はいわゆる政局というものにあまり関心がない。支持政党もない。
ただ、小泉内閣構造改革は失敗だったし、イラク戦争への加担は過ちだった。安倍内閣教育基本法改正は改悪だったし、現在の麻生内閣の定額給付は愚策だと思うという、そういう単純な理由で近年の自民・公明連立政権の政治についてはまったく評価していない。
しかし、自民・公明連立政権に否定的であることが、イコール民主党支持とはならない。
あえて「民主党支持のふりをしてみよう。」http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1157.htmlという意見があることも知ってはいるが、私にはできそうもない。
私が民主党を支持しない理由は、第一に、同党所属都議会議員のなかに、学校教育に対して呆れかえるような不当介入をしながら反省の色も見せないトンデモ都議がいるのに、これを除名しないこと。
http://bogusne.ws/article/115899624.html
誰も知らなかった真実を白日のもとにさらけ出すbogusnews諧謔に過ぎるようなら、もっとお育ちのよい下記の記事をご参照あれ。
http://d.hatena.ne.jp/debyu-bo/20090314/1237039948
http://d.hatena.ne.jp/debyu-bo/20090318/1237311228
これだけで十分過ぎるほどだが、この件は大勢の所属議員のうちのひとりの暴走であって党全体の問題ではないと言えるかも知れない。しかし、それだけではない。
第二の理由として、安倍内閣時代の教育基本法改正論議に際して、与野党のなかで最もお粗末な議論をしたのが民主党であること。
教育基本法についての民主党の姿勢に対する私の批判は以下の通り。
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20060421/1145610010
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20060422/1145672077
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20060508/1147082226
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20060510/1147260354
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20060511/1147325720
http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20060513/1147494056
この党にしてあの都議あり、と深く納得するものである。
第三の理由としては、民主党出身の神奈川県知事が禁煙の全面化を目論んでいるという恐ろしいニュースもあるのだが、これは喫煙者同志諸君にしか共感は得られないだろうから、ここではふれずにおこう。
ともかく、以上の理由により私は民主党を支持するふりができない。

にしても、おかしい

しかし、それにも関わらず、昨今の西松建設疑惑についての検察の強制捜査は実に胡散臭く感じられてならない。
最近かよっている歯科医院の待合室には院長の趣味なのか「ゴルゴ十三」のコミックが並んでおり、待ち時間にそれを読んだりしているものだから、荒唐無稽な陰謀論に染まってしまったのかと自らの感性に疑いを抱いたりもするのだが…。
にしても、おかしい。
あたかも検察(行政)とマスコミが一体となって、連日のように野党第一党党首を攻撃しているかのように見えてしまう(錯覚?)。
内閣支持率が低く、年内に選挙が予定されており、一部には政権交代への期待もある、という状況下で、まさかそんな見えすいたことをやるはずがない、とも思うのだが、しかし、振り返ってみれば安倍内閣時代、教育基本法改正への世論作りのために、広告代理店を使ってタウンミーティングで「やらせ」までやって政策が支持されていると演出したことがあった。国民的人気のある政権与党が、「美しい国」を標榜する内閣が、まさかそんなはしたないことを、と思うようなことが現実にあったのだった。
一市民としては、政治家(官僚も含む為政者)にマナーやモラルを要求すべきだが、それを期待してはならないというのが現実である。このことをわきまえると研幾堂さんのいうこともなるほどと腑に落ちる。以下、私の漠然とした疑念に形を与えるために研幾堂さんの言葉を借りる。
http://d.hatena.ne.jp/kenkido/20090305
http://d.hatena.ne.jp/kenkido/20090306
http://d.hatena.ne.jp/kenkido/20090310
http://d.hatena.ne.jp/kenkido/20090310
研幾堂さんが息の長い文章で繰り広げておられる議論を、強引にかつ手際よく要約することなど、凡庸な私にはできかねる荒技だが、あえてするならこういうことである。
1.そもそもそんなに大騒ぎするようなことか、駐車違反車両1台を検挙するために湾岸エリアを封鎖するようなものだ(法的正義の実現性がきわめて疑わしい)。
2.政治的な意図があるのじゃないか(法的正義の実現以外の意図が伴っている)
3.もしそうであれば、それは民主主義の政治として不当である。
三点目については次のように言われる。

そして、その摘発の対象に関して、司法がやがて下すべき、また司法のみが下し得るところの、罪悪の存在する可能性を喧伝し、この可能性を声高に人々に聞かせることで、注意をそこに向け代え、そうして、現在の政府が、その政治的正当性を喪失しつつあることから、人々の眼をそらしてしまった。よしやもし、摘発対象たる一議員が、罪に服すべきものであるとしても、そのことを明らかにすることと、政府の責任を明らかにすることとを比べるならば、どちらが優先されるべき課題であろう。私は、後者こそが、先んじて問われねばならないことであると考える。また、民主主義の政治に於ける政府は、まずなによりも、自己が政治的責任をどれだけ果たしているかを、議会並びに人々に対して証明する義務を果たすべきであるとも考えている。

ここで研幾堂さんが言っていることは、推測でもなんでもなく、現実にそうなっている。「現在の政府が、その政治的正当性を喪失しつつあることから、人々の眼をそらしてしまった」、これは事実を端的に指し示している。
そして極めつけはこれである。

 ・・・国策捜査なんて言うもんじゃないとか、陰謀論に落ち込むなとか、とかく、政府のすることに疑いや不審の目を向けるなんて、もってのほかな態度だと、さも良識的ぶって盛んに言われているけれど、それらすべて、私から言わせれば、政府のしているところをそのままに受け入れていけば、我々に取ってよい社会、いや社会の概念などそこにはなく、その政府の元で、我々は良い現実に生きていることになるんだ、と政府の指導に服従を強いるだけのものである。

私にはまことにごもっともと思われる。
研幾堂さんはまた、この事件が「権力闘争の性格を多分に帯びている」と指摘している。
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/kenkido/20090319
ただし、それは麻生対小沢、どっちがいい者かというようなわかりやすい構図のものではない。

この権力闘争は、その見かけの姿で解するならば、皮相な理解に終わり、その真の姿、この闘争の決着がついたならば、何が我々に結果するのかが、実はよく見えないものである。

私にも、本当は何が問題なのかと疑わせるような安っぽい疑似餌の陰で、別の目的のための暗闘が繰り広げられているような印象がある。それが私を不安にさせる。
この戦いで全滅し亡霊となって彷徨うことになるのはいったい何であるのか(郷原氏は検察を一木支隊に見立てているが果たしてこの戦いは「検察対小沢民主党」の闘いなのであろうか)、予断を許さないのは捜査の進展よりも実はこの点なのではないか。

追記

↓この程度の話ですめばいいのだが。
FLASH」がスクープ?「AVに女幽霊」 実は単なるホラー作品だったhttp://news.nifty.com/cs/headline/detail/jcast-34564/1.htm