別居正解

何があったかというと、親子げんかである。
それにしても去年の暮れから、これも親孝行だと思って仕事を休み、せっせと老父の車椅子を押し、老母の手を引き、病院やら役場やらに付き添っていたのがすべて裏目に出て、私が金に困って悪事を企んでいるようなことを言われたのには、腹が立つやらうんざりするやら、悲しくなった。
ついこのあいだまで、ニコニコしていた老人の態度が急変して、「親をないがしろにして何を企んでいるのだ。余計なことはもうしないでくれ」と頭ごなしに怒鳴られた。
いったい何が何やら…。この一週間、途方に暮れていたのだが、今日、最近の新聞を見て、もしかしてこれか?と思い当たったのが、大手家具メーカーのお家騒動である。
私のところはもうテレビを見るのをやめてしまったので気にも留めなかったが、もしかして、このニュースは企業の経営方針をめぐる対立としてではなく、子どもが老父母を追い出した家庭紛争として、お昼のワイドショーなどで面白おかしく味付けされて、繰り返し報じられていたのではなかろうか。
老親は毎日のほとんどの時間をテレビを見て過ごしている。ニュースやドラマの細かいところはもうよくわからないようで、どうしたらそういう話になるのかと呆れるような感想をもらすこともあるが、ご近所の口コミをのぞけば、ほぼ唯一の情報源だからテレビの影響は大きい。
テレビを見ているうちに、年齢の近い家具メーカーの前社長に感情移入して、妄想に駆られるということはありそうな話だ。
息子としては心配ではあるけれどもしかたがない。しばらく距離を置くことにした。別居正解。