泣き叫ぶ若い女

今日の昼、12時を少し過ぎたころでした。
僕は、遠来の客人に会うために都心に出ようと、JR中央線三鷹駅の1番2番線ホームに降りる階段の上にいました。
ちょうど1番線に入ってきた、三鷹駅折り返しの地下鉄東西線直通電車に乗ろうとしていたのです。
階段を降り始めたときにホームで異様などよめきがあがり、女性の叫び声が聞こえました。
なんだろうと思いながら、階段を下りていくと、目に涙を浮かべ、顔を引きつらせて泣き叫んでいる女性(20才くらい)が、駅員さんに抱えられるようにして連れてこられるのが見えました。
そばに心配そうに付き添っていた友人らしい同年代の女性も青ざめた顔をしていましたので、彼女らがよほどひどいショックを受けただろうことは、鈍感な僕にもすぐにわかりました。
泣き叫んでいる女性は、足腰に力が入らないようで、膝をくの字に曲げてがくがくとふるわせながら、肩をかしている駅員さんにすがりつくようにして階段を上ってきました。
あまりの光景に呆然としていると、僕の後から数人の駅員さんがものすごい勢いで追い越し、階段を駆け下りていきました。
ホームには20人くらいの人が、これも呆然とした表情で立っていました。
しかしその視線の方向は、泣き叫びながら連れて行かれる女性を追うのではなく、僕が乗ろうとしている1番線に停車中の車両に向けられていました。
車両は、乗客を乗せたまま中途半端なところで止まっていました。
あ、さては、と思いながらホームに降りた僕は、そばにいた大学生くらいの若い男性に、何かありましたか?と声をかけると「人身事故です、たった今」と返事が返ってきました。
ああ、先ほどの娘さんは、その瞬間を見てしまったんだな、と納得しました。
駅員さん達は「消防・警察への連絡はっ」「すみました」「目撃者はっ」などと怒鳴り合いながら走り回り、うち一人は、ホームと車両のすき間に向けて「おーい、返事しろ、今いくぞ、がんばれ」などと怒鳴っていました。一人が声を嗄らすと、別の一人が替わって、また同じように声をかけています。
はねとばされたのではなく、列車の下敷きになっているようです。
そこへ警察官が到着、「意識はっ」「ありません」との会話。
目撃者らしい若い男性が、自分はこの位置にいて、落ちた人はホームの端で線路をのぞき込むようにしていたということを、身振りを交えて説明していました。
なお、これhttp://www.tokyometro.jp/unkou/history/touzai.htmlによると、「02月17日 12時31分 東西線は、JR中央緩行線三鷹駅で人身事故が発生。このため、三鷹行の直通運転を中止しております。」となっていますが、事故発生はその前です。待ち合わせている人に少し遅れますとの第一報を入れたのが、私の携帯の発信履歴では12時22分、これは事故が起きてからしばらくたってのことですから、12時15分くらいのことだったのではないでしょうか。
事故か自殺かはわかりません。理由はわかりませんが、今日も実に簡単に人が死んだ。
そしてそれを目の当たりにした若い女性は、顔をゆがめて泣き叫び、自分の足で立っていられないほどだった。
こんなショッキングな光景もすぐに忘れてしまうでしょうから、ここに書き留めておきます。