歩行器につかまらないと歩けない老母をつれて、やっとの思いで見舞いに行くと、つい三日前、やがて眠るように息を引き取るはずと医師に言われた老父は五回目の奇跡の復活を遂げており、勝手に検査器具を外して自慢げな表情を浮かべたり、看護婦さんに愛想笑いをしたりしていた。
認知症で、もう話半分もわからないだろうわがまま親父に「納期が迫るたびに危篤になるのはもう勘弁してくれよ」と言い聞かせる。納期どころじゃない、四月には義父の葬儀にまでぶつかって、私ら夫婦はてんてこ舞いだった。いいかげんにしろ、くそ親父。
母を実家に連れ帰ると、頭痛がはじまり、しばらく実家で横になる。夕方、なんとか我が家をめざして帰路につくが、途中で頭痛がぶり返し、足も肩にかけたカバンもやたら重い。
こういう時はラーメンである。
バスを乗り換える調布駅前で、煮干しラーメンを食べる。美味い。醤油味のマイルドなスープとやわらかめの麺が「今日もお疲れ様」といたわってくれているように感じる。調布駅北口にはこの手のラーメンを出す店が何軒かあって、どれも美味い。そらまめや喜多方ラーメンも美味い。ついでに書いておくが、三鷹駅前の徳一という店の八王子ラーメンも美味い。流行りの豚骨どろどろスープは苦手なので、こういう店があると助かる。