麻婆豆腐、豆腐の味噌汁、レタスとトマトのサラダ。
しばらく前から土日は老親の世話、平日は仕事と、休みのない暮らしを送ってきたが、最近は、老親の世話が平日にもあることが多くなり、結果として仕事が土日にずれ込む。ところが、土日はもともと老親の世話があるものだから、土日の方が平日よりもスケジュールが立て込んでしまうという、なんとも可哀そうなことになっている。
念のために言っておくが、可哀そうなのは私である。
そんなわけで、晩御飯の献立についても熟考する余裕などさらさらなくなり、ついに昨夜のように豆腐尽くしになりかけたりすることもある。
さすがに妻も私のてんてこ舞いを承知してくれており、多少のことには目をつぶって、美味しい美味しいと言って食べてくれるのが何よりも有難い。
こんなによい妻とめぐりあえた私は幸せ者である。
それはともかく、過労のためか冷房病になった。
帰宅しようと事務所を出て、しばらく歩くと動機や息切れがして歩けなくなる。さては高血圧が悪化したかと心配になって、かかりつけの医者に飛んで行ったが異状はないという。異状はなくても異常はあるのだから困ったものだ。
どうやら私の作業机がクーラーの真ん前にあるのがいけないらしい。暑がりの汗っかきなので今の事務所に引っ越してきたときにこの場所に陣取ったのだが、加齢とともにクーラーで冷えると血行不良になるようになったようだ。
ようだ、というのは、私は健康についての知識がほとんどないので自信がないからである。
それでもクーラーが怪しいとにらんだのは、先日、自宅のクーラーのフィルターがホコリで目詰まりを起こしていたので風呂場に持って行って洗っていたら、しゃがみこんでいたのが悪かったのか、腰をやられてしまったからだ。久しぶりのぎっくり腰である。
もちろんこの悲劇にも伏線はあって、その前日に老親の車椅子を押して大学病院のなかを右往左往していたのが祟ったのだろう。
しかし、ギクッときたときに目の前にあったのはクーラーのフィルターであったから、恨みつらみはすべてそれに転嫁されたのである。
とにかくクーラーが悪い。
そう思ってみれば、この間からの体調不良も冷風の直撃によるのではないか。
体が冷え切ったまま、蒸し暑い外気のなかを急に歩きはじめるものだから、心臓が目を回しているのだろうという素人診断である。
そう思えば気が楽だ。
不定愁訴はあまり深く考えすぎないにかぎる。
それよりも今夜の晩御飯はどうしようか。悩みは深い。