中国古典

「人を知らずば其の友を見よ」

先日、「人を知らずば其の友を見よ」という文句の出典を探していたら、孔子の言葉としているのをネット上で見かけた。あれ?と思ってよく調べてみると『荀子 下 (岩波文庫 青 208-2)』性悪篇だった。もちろん、ネット上でもことわざ辞典の類いではちゃんと荀…

『史記』には西施が出てこない

西施の顰にならう故事、『荘子』に出てくるのは読んでいたが、『史記』には西施が出てこないことを確認。 読み返したのは『史記』の「呉太伯世家」と「越王句践世家」、西施が出てくるとすればこのあたりなのだけれども出てこない。どうやら、西施の逸話は『…

嗚呼、先生も老いられた

孔子に、聖人とは思えないほど困った発言があるのは、T_Sさんの孔丘先生シリーズでも面白く紹介されている。 http://d.hatena.ne.jp/T_S/20120617/1339865744 元ネタの浅野裕一氏の著作よりも面白いくらいだ。というのも、T_Sさんは『論語』を大胆に現代語訳…

司馬遷の曹参評

道家の思想といいますと、何か非常に高尚で深遠な形而上学のように言う人もあれば、仙人の心得のように思う人もありますが、いずれも偏った見解だと私は思います。古代中国の思想というものは、どんなに浮世離れしていても何がしか社会思想としての側面を持…

人間は彼が食べるところのものである

哲学者のフォイエルバッハは『孟子』を読んでいたようである。晩年の著作『唯心論と唯物論』で「中国の哲学者は正しい」と書いている。19世紀ドイツの唯物論者が『孟子』の何に感心したかというと、告子章句上八の易牙のエピソードなのだ。

子張

『漢書』芸文志によれば、『論語』子張編には実は現存のテクストの他にもう一つのバージョンがあり、そちらは「よげんの書」であるらしい。 http://d.hatena.ne.jp/T_S/20120220/1329665918 どこをどう考えたらそうなるのか、風邪の治りかけの頭で考えた。 …

西門豹が河伯娶婦をやめさせた話

先日、『史記』で、西門豹の話が「滑稽列伝」にあるのに違和感を覚え、これは「循吏列伝」の方がふさわしかったのではないかと思ったものの、それも私一人の妄想かと恐れて賢者の教えを乞うた。 http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20120110/1326127106 有り…

西門豹

不勉強といえば、西門豹の話があった。 『史記』「魏世家」に、西門豹(せいもんほう、と読むらしい)という人物がでてくる。『韓非子』によれば、もとは性急な人であったが、ゆるい皮帯を身につけることで、せっかちな気性を直したのだという。『史記』には…

墨子よみがえる

墨子よみがえる (平凡社新書)作者: 半藤一利出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2011/06/15メディア: 新書 クリック: 4回この商品を含むブログ (3件) を見る主題は古代中国の思想家・墨子である。古代中国思想で、戦争というものを捉えた思想家というと、孫子、…

市中の虎

震災以後、政治について語ることがすっかり嫌になってしまった。 その最大の理由が、政局報道の過熱と偏向である。偏向した政局報道の蔓延というべきかもしれない。 政局報道の偏向については説明すると長くなるので省略するが、一言でいえば、憶測をまじえ…

韓非子の「矛盾」6難勢編5

韓非子の言い分は、統治に有用な「勢」とは、人為の「勢」であって、歴史の趨勢のような自然(必然)の「勢」ではない、というものだった。 さて、いよいよ有名な矛盾の説の逸話が出てくる。

韓非子の「矛盾」5難勢編4

いよいよ「矛盾」の逸話が出てくるところにさしかかっているが、どうもわからないところが多い。

『史記』孫子呉起列伝より

上記に、部下に親切にして死地に赴かせる将軍についてうろ覚えで書いたが、id:T_Sさんよりコメントをいただき、呉起のことではないかと教わった。 帰宅して『史記』を開くと、はたしてT_Sさんの言う通りであった。 恐れていた通り、記憶違いの部分もあったの…

韓非子の「矛盾」4難勢編3

『孫子』計篇にも「勢」について述べているところがあった。 将わが計を聴くときは、これを用うれば必ず勝つ、これを留めん。将わが計を聴かざるときは、これを用うれば必ず敗る、これを去らん。計、利としてもって聴かるれば、すなわちこれが勢をなして、も…

韓非子の「矛盾」3難勢編2脱線して『孫子』

「矛盾」の逸話が出てくるので読み始めた『韓非子』難勢編は「勢」についての議論である。「勢」とは何か? 「物事には、ホレ、勢いっちゅうものがあるだろうが」と言われれば、ああなるほどと思ったりするが、あらためて何かと考えるとあやふやになってくる…

韓非子の「矛盾」2難勢編1

難勢編の議論はもう少し複雑である。難一編では儒家に的を絞っていたのに対して、金谷治氏の注釈によれば難勢編では、墨家の尚賢論も射程におさめているようである。 難勢編の議論は大きく分けて三段構えになっている。初めに慎子の「勢」の思想を紹介し、次…

韓非子の「矛盾」1難一編

カントのアンチノミーを読みなおさなければ、と思いながら『韓非子』を手にとってしまう自分っていったい…、と苦笑しながら、『韓非子』を読んでいる。 言い訳を言えば、韓非子の言う「矛盾」はヘーゲルの矛盾よりもカントのアンチノミーに似ていると、何か…

孫子「上兵伐謀」

誰でも知っている孫子の言葉に「戦わずして勝つ」というものがある。 正しくは以下の通り(Web漢文体系万歳)。 百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。 この文には後段があって、次のようになっている。 …

孫子「上下同欲」

誰でも知っている孫子の言葉に「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」というものがある。 正しくは以下の通り(漢文体系万歳)。 ゆえに曰く、彼を知りて己を知れば、百戦して殆うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、…

止まるを知る

『大学』冒頭の一節より。 止まるを知ってのち定まるあり、定まってのちよく静かに、静かにしてのちよく安く、安くしてのちよく慮り、慮りてのちよく得。 この「止まるを知る」とはどういうことか、が宿題。 もちろん、この前には「大学の道は、明徳を明らか…

天下皆知美之爲美。斯惡已。

『老子』第二章の次の文を読んでいた。 天下皆知美之爲美。斯惡已。皆知善之爲善。斯不善已。故有無相生、難易相成、長短相形、高下相傾、音聲相和、前後相隨。是以聖人、處無爲之事、行不言之教。萬物作焉而不辭、生而不有、爲而不恃、功成而弗居。夫唯弗居…

「責任」という漢語

『老子』の成立時期はいつ頃かというのは難問の一つのようだ。諸説あって、私のような素人にはなんとも判断がつかない。 けれども、『老子』は『荘子』に引かれている以上、『荘子』よりは先に成立していたと想定するのが自然だろう。ただし『老子』を引いて…

反間

『孫子』用間篇より。 必ず敵人の間(かん)の来たりてわれを間(かん)する者を索(もと)め、よりてこれを利し、導(みちび)きてこれを舎(しゃ)す。ゆえに反間(はんかん)は得て用(もち)うべきなり。これによりてこれを知る。ゆえに郷間(きょうかん…

メモ

『史記』の白起・王翦列伝には秦の将軍白起が長平の戦いで捕虜四〇万を、項羽本紀には項羽が鉅鹿の戦いで捕虜二〇万を、それぞれ生き埋めにしたとあった。 ヒマになったら『史記列伝』と『孫子』を読み返すこと。

天網恢々疎にして洩らさず

kurahitoさんが『老子』を引いている。http://d.hatena.ne.jp/kurahito/20070926/p1

魏咎

ずいぶん前にkurahitoさんからお尋ねのあった、国民のために死んだ王について。 『史記』列伝中に魏咎という人がいました。 『史記〈6〉―列伝〈2〉 (ちくま学芸文庫)』でp182-p183。 秦に滅ぼされた旧魏国の元王族で、秦末の動乱のなかで秦への反乱軍に荷担…

『大唐西域記』

気分転換に玄奘三蔵の『大唐西域記』をパラパラめくっていたら、面白いものを見つけた。 別に三伽藍があり、乳酪を口にせず、提婆達多の遺訓を遵奉している。(『大唐西域記』、平凡社)

『孫子』虚実編より。

世間は連休だというのに、零細自営業者は下請けの仕事(休み明けが納期)に追われています。 おかげでid:annntonioさんのいうスイーツってなんのことかわからないくらい。

『老子』十九章

先日、つまらない思い出話の引き合いに出した『老子』十九章について、t_keiさんより「規範的なものに回収されてしまうことへの批判、という風にも受け取れるんじゃないだろうか」というコメントをいただいた。これを機会に『老子』の読み方について考えてみ…

『老子』家族的経営

先日、孟子と比較できるかと思って『老子』の「大道廃れて、仁義あり…」の句を引いたが、あの章句のあとには次の章句が続く。 聖を絶ち智を棄つれば、民利百倍す。仁を絶ち義を棄つれば、民孝慈に復す。巧を絶ち利を棄つれば、盗賊あることなし。この三者は…